【派生作品】まがれまがれ、ガリオンよ (ページ18)

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ガリオンは明日には保健室のベッドから解放されるらしい。その知らせを告げる彼女の顔は綻んでいた。

「これ、面白そうじゃありません？」

　ロレッタが持ってきた本の一冊。あるページを指差して、ガリオンは言う。それは簡単な魔法が記載された本だった。基本的には低学年向けの魔法ばかりが記載されているが、派生魔法の作り方も載っている。

　ガリオンが指していたのは、忘れたものを思い出す魔法だった。とは言っても、そう効力が強そうなものではない。思い出せる範囲は精々一ヶ月程度らしかった。

「そうかな？ガリオンちゃん、何か思い出したい事でもあるの？」

「いえ、特には。でも忘れていた事をふと思い出す感覚って、私好きなんですよね。それに、面白い事を思い出せたらって思うとやってみたくなりません？」

「まあ、それはそうだけどね……けど、一ヶ月だろう？」

「大丈夫ですって。私、こう見えて魔法の改造が趣味なんですよね」

　呪文学ではいつもトップの成績なんですよ、と得意気に続けるガリオン。思い出しの魔法はちょっとした工程が必要なようで、その行使に必要な素材を確認している。

「あまり無茶しすぎないようにね。これは私の先輩の話なんだけど、うっかり魔法が暴走して爆発しちゃった、なんて事もあるらしいし」

「噓だぁ、絶対大袈裟に言ってるだけですよ、それ。魔法が爆発なんて、そんな事あります？」

　そんな事をしばらく話して、そろそろ時間だから、と保健室を出るロレッタ。ロレッタは寮へと続く廊下を歩きながら、保健室に来る前の事を思い出していた。