シンデレラと王子様

大貴王子 ページ16

大貴side



ジリジリと俺の肌を刺すように照りつけてく

る太陽。

毎日飽きずに求愛行動を続けるセミ。

通り過ぎる車の排気ガス。

普段なら嫌気がさしてしまうようなもの。

だが今日は少し違う。

そのどれもが愛おしく感じる。

何故かって？

だって今日は……



あい『大貴、女の子だって』



俺と愛する人の愛の結晶が生まれた日だから。

にこりと俺に笑顔をみせたあい。

そのあいの腕には、さっきまで初めての世界

に戸惑いながらも必死に産声を上げてる小さな

命がいた。

つい５分程前に産まれてきた。

俺が仕事をしている時に破水したらしく、

駆けつけた時には分娩室に入っていて

出産には立ち会えなかった。

出産予定日よりも１ヶ月くらい早く産まれてき

たが母子ともになんの問題もなかったみたい。



大貴『あい、もう大丈夫なの？』

あい『うん！この子の顔みたらしんどかった
の忘れちゃった！』

大貴『なら良かった』

あい『大貴も抱いてみる？』

大貴『い、いいの？』

あい『フフ、大貴の娘だよ』



クスクスと笑いながら、我が子を手渡してくる

あい。

緊張して手汗が出てくる。

腕に思ったよりも軽い体がのる。

筋肉が硬直して固まってしまう。

するとさっきまで気持ち良さそうに寝ていたの

にくしゃりと顔が歪み、今にも泣きそうに

なってしまう。



あい『大貴、もっと力抜いて柔らかく』

大貴『う、うん』



深呼吸をして言われた通りに力を抜く。

すると泣くことなくまた気持ちよさそうに

眠りだす我が子。



大貴『か、可愛い…』



なぜか潤んでしまう俺の眼。

あー、ダメだ泣きそう。

泣き顔を見られたくないので

あいに我が子を預け、腕で顔を覆って

涙を拭う。



あい『アハハ、パパ泣いちゃったね〜』



我が子に話し掛けるあい。



大貴『泣いてないよ』



鼻声で反論しても全く意味がない。



大貴『そんな事より、名前…どうする？』

あい『私ね…子どもの頃から‘‘ 桜 ”って名前
に憧れてたのね。だから‘‘ 桜 ”ちゃん
って名前にしようと思うの』

大貴『桜…いいじゃん。俺は古風な名前に
したかったから、すごくいいと思う』



俺がそう言うとあいはにこりと笑って

こう言った。



あい『これからよろしくね、桜』



守るものがひとつ増えた。

愛するものもひとつ増えた。

これからも愛する人達のために頑張ろう。





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慧王子→←涼介王子

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