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柘榴の身…tn ページ20

※軍パロ

燃えるような痛みが走る。ポタポタと赤い液体は鍋の中に消えていく。何時間くらい煮込めばいいのか分からないが、ひとまず三十分くらいか。

「トントン、お腹減っちゃった。」
「おん、少し待っててくれ。」

腹をすかせたAが皿を持ってとことこと歩いてくる。先の戦争でよほど怖い思いをしたのか、怯えて帰ってきて、人が変わったようにぼんやりと過ごすだけになってしまった。しかももっと厄介なのは味覚が変わってしまったこと。普通の食事ではもう美味しさを感じられなくなってしまったらしい。

幸いにも、この国は資源が多い。こいつが美味しいと感じるものがいくつか見つかった。ただ、他人にこいつの食事の用意は任せられなくなった。気味悪いだとか、変に話が広がってしまうだろう。

「ほら、出来たで。」
「わあい。今日は何?」
「ザクロのスープ。」

そう言うとにこにこと笑ってスプーンを口に運ぶ。上品に動くシルバーは以前のAを思い出させた。

「ねえ、トントン。」
「なんや。」
「…これ、美味しいね。」
「そうか。」

コーヒーをすすってAの言葉に耳を傾けた。

「ねえ、トントン。」
「なんや。」
「もう、ザクロって嘘つかなくていいよ。」
「……。」

笑顔を崩さないまま、こちらを見つめてくる。その目に光はなくて、どこを向いているのか分からない。

「最近ね、お城で見かけないなあって子、増えてきたの。」
「…そうか。」
「トントンなんでしょ?私のご飯作ってくれるの、トントンだもん。」

何も言えなかった。自分の行動に対しての罪悪感なのか、プライドなのか。はたまたこいつに見透かされたのが癪だったのかは分からないが。

「ねえトントン。」
「ん?」
「今度はトントンのも、食べてみたいなあ。」
「…考えとくわ。」

Aは満足そうに肉を口に運んだ。

秘密の勝負…zm,em→←Kiss in the Dark…ht



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羅威那(プロフ) - 兎餅さん» ただいまリクエスト消化滞っておりまして…いつ書き上げることができるか分かりませんがそれでもよろしければ… (2022年4月28日 23時) (レス) id: c967219d95 (このIDを非表示/違反報告)
兎餅 - sinpさんが、ヤンデレ化して夢主を閉じ込める系のって、書けますか……? (2022年4月24日 7時) (レス) id: 1c6f84240e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - ありがとうございます!お待ちしてます! (2020年3月14日 3時) (レス) id: 525527bd5b (このIDを非表示/違反報告)
羅威那(プロフ) - ひかるさん» ひかるさんリクエストありがとうございます。最近思うようにかけず、更新が滞っておりますがそれでも良ければお待ちいただきたく思います。 (2020年3月13日 22時) (レス) id: ac81da58c3 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - knさんが嫉妬してる感じのお話読みたいです…!! (2020年3月9日 21時) (レス) id: 525527bd5b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:羅威那 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年9月13日 2時

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