もう一度恋してみませんか？２【K・N】 (ページ21)

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65 帰社～伝説の男ページ21

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「ただいま帰りました」

ドアを開けて編集部に入ったら、珍しく誰もいない

定時は過ぎてるから、雛子達事務の人はとっくに帰ってる時間だけど、いつもならもっと沢山の編集部員が作業してるのにどうしたんだろ？

キョロキョロと辺りを見回していたら、珈琲のいい匂いがしてきた

『Aちゃんお帰り』

背中から声が聞こえて振り向いたら

『はい、ドーゾ』
松本くんが珈琲を差し出してくれた

「ありがとう。でもそれ、松本くんが飲むから入れたんじゃないの？」

『さっき帰って来るのが見えたからさ。なんだかさぁ顔が疲れてるよ。とりあえず飲みなよ』

松本くんが差し出した珈琲を持って、部屋の隅にある打ち合わせ用のソファに座る

珈琲の香りを胸一杯に嗅いでから口にする

「甘い…」

『仕事で疲れた時には糖分も必要だろうからね』

松本くんがニコッと笑う

松本くんは、年齢だと２年先輩で、社内は後輩になる

入社試験の時に、
『こちらの会社の雑誌は、すごく魅力的な作りをしているのに、詰めが甘いと思います。もう少し工夫したらもっと売れるのに』

大胆不敵にもそう言ったそうで伝説になってる

「素人の君に何がわかるんだね。生意気にもほどがある』

面接した採用担当役員にそう言われても動じることもなく

『素人の俺に、そう言われる方が問題じゃないですか？。俺ならもっと売り上げ伸ばせますけどね』

堂々とそう言い切ったそうだ

その役員は激怒して、こんな奴は絶対に採用しないと言い放った
だけど、その時たまたま同席していた若い編集者の

『こういう奴がいたほうが面白い。お手並み拝見と行きませんか？』

その一言が社長の耳に届いたらしく、松本くんの採用が決まったと噂で聞いた
激怒した採用担当役員は、採用した事を後悔するぞ！と、廊下ですれ違った若い編集者を睨みつけてに言ったそう

その編集者が櫻井

だけど、研修の後櫻井の下に配属されてから、松本くんはメキメキと頭角を現した

彼の企画は斬新で、若い女の子の読者の心を鷲掴み
だけど、既存の企画も大切にしていて
それを時代に合わせてリニューアルしたりして、
購買数が跳ね上った

それを知った松本くんを落とそうとした採用担当役員が歯ぎしりしたとかしないとか

そんな逸話の持ち主だ

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