弐拾伍−家族の笑顔を守りたかった。 ページ25
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「単刀直入に言うと、俊之さんと私の父、
やはり、そうだった。納得がいった。何故、父は刀を握っていたのか。何の為に。きっと、それは守る為だった。鬼の首領、鬼舞辻無惨を倒し、皆の幸せを、平穏を。笑って明日が迎えられるように。
「その中で父と俊之さんは、祖父から白の呼吸を学んでいました。そして、適応したのは俊之さんでした。祖父は、その簪と呼吸を俊之さんに託しました。継承していく事は、先程読んだ書物にあった通り、約束だったからです。」
俊之は託されたそれを、義幸やAに伝えた。大切な約束を、託して死んだ。あの日、Aから涙は出なかった。けれど今、唐突に涙が溢れた。流れ、畳に落ちた。
「私の父も、今はもう彼岸へ渡りました。鬼に殺されたのです。きっとその鬼は、義幸さんやAさんを狙ってくるはずです。その時は、どうかお気を付けて。」
同じなのかもしれない。俊之と昭仁を殺した鬼は。勇の言い方だと、白の呼吸を知る人物を、その鬼は殺している。というように聞こえる。恐らく、その通りなのかもしれない。
「…それと、この書物を書いた人物は『川端 弥生』という女性です。その人は私達、川端家の先祖です。」
川端 弥生。彼女がどういう思いでこれを書いたのか、勇にはよく分かった。悲しみや、不甲斐なさ、無力さに苛まれながらも、己に託されたものを繋げる為に、溢れ出るものを堪えて筆を執ったに違いない。
俊之がA達に、白の呼吸を舞として教えたのは、刀を持ってほしくなかったから。刀を握らず、ただ、普通に、舞として継承していって欲しかったのだろう。しかし、これは勇が言う事ではない。二人の努力を侮辱することに繋がるから。
「少し、長くなってしまいましたね。すみません。湯も沸かしてありますので、どうぞお入りください。では失礼します。」
「ありがとうございました。」
炭治郎がそう勇に言う。勇は、いえ、と微笑んで部屋を出た。襖を閉めて、廊下を歩き縁側へ向かう。
縁側に座り、月を眺める。
「嗚呼、やはり、貴女は」
涙が頬を伝い、顎先から雫が落ちる。Aを見た時、魂が叫んだ。この人だ！！と。捜していた。ずっと。待ちわびていた。この時を。
貴女も涙を流してくれた。同じ気持ちだった。それが無意識のものでも、それでも嬉しかった。
「姉上…」
静かに、呟いた。
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作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
