弍拾壱−信じられたなら ページ21
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炭治郎と煉獄が何か話している。けれど聞こえない。こんな遠い場所からは。どうして、こんなにも尊い命が散っていくのか。奪われていくのか。許し難い。守れない自分も、奪っていく奴らも。全部。
一気に眠気が襲ってくる。起きていたいのに、眠りたくなどないのに。嗚呼、嗚呼。少し守れたくらいじゃ足りなくて、少し力をつけたと思ったら、また遠ざかって。煉獄のような人達は、もっともっと先に居て。近づくことすらできない。強くなりたい。もっと、もっと。
「日向妹」
「れ、ごく、さ」
涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになった顔を上げると、そこには煉獄がいた。嗚呼、あそこに貴方がいてここにも貴方がいるということは、眠ってしまったのか。理解はしている。この人の死を受け入れたくない。頭がごちゃごちゃになって、嫌になる。
「竈門少年にも伝えたが、君にも伝えたくてな。俺は、君を信じる！もちろん、竈門妹もだ。自分は鬼だからと遠慮することは無い。下を向くことも。胸を張って生きろ。心を燃やせ。俺は君達を信じる。」
光の粒子となって消えていくこの人を、引き止めることは出来なかった。煉獄の後ろには彼の母、瑠火が立っていた。優しく微笑む、美しい人だった。
「は、い！！」
煉獄はAの返事を聞いて、より一層の笑顔を見せて消えていった。強くなる。強く、なります。そう誓う。もう、掌から零れ落ちることのないように。多くの幸せの為に。
その後、隠達もやって来た。皆、涙を流しながら、煉獄を運んだりと、やるべき事をやっていた。田中も涙をためながら、Aの元へやってきて箱を置いた。Aは体を縮め、箱に入り眠った。
そして、炎柱 煉獄杏寿郎の死は鎹鴉によって鬼殺隊に知らされた。柱の面々は、様々な反応を示した。信じない者、鬼の殲滅を誓う者、悲しむ者。
上弦の鬼との戦いは、これ程までに。
＊＊
「A」
「……むー」
数日眠り、傷も完治したAはどこか複雑そうだった。やはり、煉獄の死は心に深い傷を残したのだ。鬼はこの傷は治る。けれど、けれど。義幸はそんなAの頭を撫でる。
「悲しいな。悔しいなあ。よく分かる。でも、彼に信じられたのなら、託されたのなら強くなるんだ。そして、必ず鬼舞辻無惨を倒そう。それが、残された俺達にできる事だ。」
義幸の言葉に強く頷きながら、涙を袖で拭った。
さようなら、煉獄さん
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作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
