其れは誰かの為に振るうもの-Ⅲ- (ページ3)

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参－幸せな夢の中へページ3

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遅れて炭治郎たちも立ち上がった。

煉獄が息を吸い込む。

刹那、鬼の頸が転がった。それは一瞬だった。一瞬にして、彼は壱ノ型、不知火を繰り出した。刀身は炎を纏い、鬼の頸を落とす。彼の洗練された、無駄のない動きに、皆が圧倒された。

鬼は倒れ、灰になっていく。

チン、と煉獄は刀を収めた。

すると、炭治郎は何故か涙目で煉獄に駆け寄った。

「すげえや兄貴！！見事な剣術だぜ！おいらを弟子にしてくだせえ！！」

「いいとも！！立派な剣士にしてやろう！」

「おいらも！」

「おいどんも！」

炭治郎に続き、善逸、伊之助がそう言う。Aはにこにこと笑っているだけだった。

「みんなまとめて面倒を見てやろう！」

これで終わった。呆気なかったように思うが、これでもう被害は出ない。ここで誰も死ぬことは無い。そう思った。そう思っていた。そう、思いたかった。

ねんねんころり

ねんころり

息も忘れてこんころり

鬼が来ようとこんころり

腹の中でもこんころり

そう声が聞こえたような気がした。

煉獄、炭治郎、A、善逸、伊之助、車内がぐにゃりと歪んだ。夢。夢だった。出来事全て。炭治郎は、煉獄の肩に寄りかかり眠っている。Aもまた、禰豆子の箱に寄りかかって眠っていた。伊之助は、善逸の上で。皆、寝息を立てて、眠っていた。

「－－夢を見ながら死ねるなんて、幸せだよね」

無限列車の上に立つ男。下弦の壱と瞳に記された男＿＿魘夢が笑ってそう言った。

どぷん。水の中へと落ちていく。深い深い水の中へ。光すらも届かない、暗い暗い水底へ、落ちて行く。届きやしない。手を伸ばしても、伸ばしても。誰にも届くことの無い、覚めることのない、深い深い水(ゆめ)の中へ。