拾捌−どんなに足掻いても ページ18
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ピリリ、と何かがAの頭の中に流れてくる。鮮明ではない、朧気な何か。見たことの無い景色と、誰かの笑顔。きっと、これはAの頭を撫でる彼女のものだろう。けれど、その景色も数分も満たない内に消えた。
彼女の顔の辺りからポタリポタリと水滴が落ちて、光になって消えていく。恐らく、泣いている。その人は、Aの頭から手を離し、猗窩座の元へと歩いて行く。「危ない」そう言いたかった。けれど声も出ないし身体は動かない。まるで金縛りにあったかのように。このままだと、鬼に…！そう思ったが、猗窩座、煉獄には、彼女が見えていなかった。A以外誰も。
−もうやめて…
彼女は、猗窩座の腕を引こうとするも、叶わなかった。身体が薄れていき、光の粒子となって消えた。その光景を、Aは知っている。あの人はもしかすると、そう思った。身体は動くようになっている。頭痛もなくなった。なら、それならば。
「う、う゛う゛ーーーーっ」
ミシミシと体が悲鳴を上げる。もう動かないでくれ。限界だ。回復ができない、と。猗窩座は、今まで出会った鬼の中で二番目に強い。二番目…？一番は、誰だろう。いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。Aは刀の柄を掴んだ。ブチブチと、体からなってはいけない音もする。それでも。
顔を勢いよく上げた。同時に大きな音。始まった、始まった。煉獄と猗窩座の戦いが。目で追えない程の速さで、力がぶつかり合う。
「鬼にならねば、この素晴らしい剣技も失われていくのだ杏寿郎！！悲しくはないのか！！」
「誰もがそうだ！人間なら！当然の事だ！！」
Aが立ち上がろうと力を入れる。それは炭治郎も同じだった様で。
「動くな！！二人は共に重症だ！！傷が開いたら致命傷になるぞ！待機命令！！」
猗窩座の動きを見極めながら、Aや炭治郎に指示を出せる程の視野の広さ。これが柱、柱なのだ今行けば、確実に足でまといになる。動けない。動きたいけど、動けない。それを、彼は、彼らは、許さない。
また、大きな技がぶつかり合った。煉獄の左目が潰れ、頭や体から血が流れている。はあ、はぁという煉獄の息遣いが、そこに響いていた。煉獄が猗窩座へ入れた傷も、瞬く間に塞がって消えていく。
「生身を削る思いで戦ったとしても、全て無駄なんだよ杏寿郎。」
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作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
