弐−炎刀 ページ2
＊
久方ぶりに聞くその声に、泣きそうになったが炭治郎はぐっと堪えた。煉獄の方を見ると、彼は何故だか目元を和らげて笑っていた。
「そうか！霞の呼吸の才能があるのではないだろうか！今度、刀を見せてくれ！」
よく分かっていないAだったが、こくりと頷いた。そして、黒刀の話に戻る。黒刀の剣士が、柱になったのは見たことがないらしく、どの呼吸を極めればいいのかも分からないらしい。
「だが、もう安心だ！俺のところで鍛えてあげよう！！」
面倒みのいい人だなと、炭治郎は思った。すると、ガタンと車体が揺れた。無限列車が動き出したのだ。どんどん加速していく列車の窓の外の眺めも、それに伴って移り変わってゆく。
伊之助が窓を開けて身を乗り出そうとしていて、それを必死に善逸が引っ張り止める。実に微笑ましく感じる姿だが、煉獄はその二人、主に善逸が騒がしくなる言葉を口にした。
「危険だぞ！いつ鬼が出てくるか分からないんだ！」
「え？嘘でしょ！？鬼出るんですかこの汽車！！」
「短期間の内に、この汽車で四十人以上の人が行方不明となっている！数名の剣士を送り込んだが、全員消息を絶った！だから、柱である俺が来た！」
キリッとした顔の煉獄に、今にも嘔吐しそうな善逸。その対比が中々に面白い。そして、炭治郎は嫌ァーーーと汚い高音を出しながら叫び、涙を流しながら降りると言う彼に、苦笑していた。
「切符………拝見……致します……」
車掌さんがパチン、パチンと切符に切り込みを入れていく。炭治郎が何か嫌な匂いを嗅ぎとった。Aもまた、何かを感じとっていた。それは、煉獄も然り。彼の笑った口も、すっと閉ざされ、無表情へと変わった。
すると、後方に大きな体躯の鬼が現れた。
「車掌さん！危険だから下がってくれ！火急のこと故、帯刀は不問にしていただきたい！」
煉獄は、誰よりも早く立ち上がり、刀の柄に手をかけた。
乗客たちが鬼の存在に気づいた。彼らが喰われる前に。
「その巨躯を！！隠していたのは血気術か」
「気配も探りづらかった、しかし！」
「罪なき人に牙を剥こうものならば」
轟々と燃え盛る炎のような瞳が、鬼にむけられる。鳥肌が立った。車内がまるで、炎に包まれたかのように、温度が上がっていくような錯覚を覚える。
＿＿＿＿＿抜刀。赤く美しい刀身だ。
「この煉獄の赫き炎刀がお前を骨の髄まで焼き尽くす！！」
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作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
