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当てられたことに驚いていれば、黒田くんは満足そうな笑みを浮かべる。
「夏目は質問を返してきたからな。それならば、普通なら選ばない理由ではないかと思ってな」
「高校を選ぶ理由としては、普通だと思うんだけどねぇ」
「普通の高校ではないからな、この学校は。にしても、よく家が近いだけで入学したな…。度胸があると言えばいいのか」
と、少し呆れたようにこちらを見る黒田くんに、焦りながら弁明をしてしまう。
「いや、流石にここまでの不良校とは思ってなかったしさ…。それに、一応パルクールできるから、最悪の場合逃げることはできるし。何とかなるかな〜って.......」
「パルクールができるのか」
パルクールができる、と言えば少し驚いたような表情をされる。中学の友達とかとも驚いていたから、自分で思っているよりも運動ができるようには見えないのかもしれない。
「まあね、小学生の頃に始めてからずっとやってるからそれなりに」
「なるほど。危険から逃げる術があるなら、近いからという理由で選べたのか」
「そうそう、だからもしなんかあったら黒田くん先に逃げてもいいよ!何とかできるからさ」
「それはむしろ俺が置いて行かれそうだが?」
黒田くんとの会話ははずみ、時間も忘れて話し込んでいた。ふと気がつけば、教室にはだんだんとクラスメイトが登校してきていた。
「いつのまにか他の皆も登校してきてたね」
「そうだな、夏目のおかげで楽しい時間を過ごすことができた。礼を言う」
「こちらこそ、ありがとう。とっても楽しかったよ、またお話ししよう」
「ああ」
暫くしてホームルームが始まる。私と黒田くんの初めての会話はこうして、楽しい記憶として私の中に残ったのだった。
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作者名:妙党 | 作成日時:2022年10月1日 15時