38.私の王子様 ページ38
「だって、ずっとずっと、一緒にいるって、いようって、言ったくせに!勝手に事故になって!!俺は、あんたに裏切られたんだよ!!」
『……じゃ、じゃあッ!なんで私のこと好きなの!?裏切られたなら、普通嫌いに……!』
「…………なれなかったんだよ」
少しだけ、声は弱くなった。
嫌いに、なれなかった。彼は、そういった。
「なれなかったんだよ!嫌いに!嫌いになりたかった!大っ嫌いって、言いたいほど嫌いだった!!でも!
あんたのこと大嫌いなほど、大好きだった!」
「俺には、あんたしかいなかった!」
ポロポロと、彼の頬に涙が伝う。
慟哭のように叫んだ言葉の奥に、寂しさを感じる。
自らの手の甲で涙をぬぐうと、私を鋭い眼光で見やる。
その目にビクビクとしながらも、口を開く。
『……わ、たしだって、真冬くんしかいなかった』
頼れる存在も、信じられる存在も、
好きだって思える人も、
真冬くんしか、いなかった。
『いつもいつも、助けてくれて、初めてだったの。私に優しくしてくれる人。誰も、相手にされなくて、でも、真冬くんは優しかった』
『真冬くんのお陰で、私、消えたくなくなったよ。私が消えたいって言う度、いつも駄目だって叱ってくれたから』
『真冬くんが、私のことを信じられなくても、私が、真冬くんのことを信じられなくても、これだけは、変わらないから』
『私は、真冬くんのことが、好きです』
拳に力を込めて、笑った。
伝えたかった、本当の言葉。
ドキドキと胸が高鳴る。
頬を赤らめて、彼を真剣に見つめる。
ベタな告白だけど、これでいいんじゃないかな。
真冬くんが好きだって百回いってくれるなら、私は好きだって千回言おう。
言って、あげよう。
「…………ごめ、ん、……僕、君に、こんな、こと……」
こんなこと、私を閉じ込めたことだろう。
もう、気にしていないのに。
顔を手のひらで押さえながら泣きじゃくる彼は、床に力なくして座り込む。
それはさながら、小さな子供のよう。
たぶん、私が置いてきてしまった、裏切ってしまった彼なんだろう。
「ごめ、んっ……!ごめん、なさっ……!しんじられ、なくて……!ぼくが、ぼくがぁっ……!」
私は、彼に寄り添うべきだったんだ。
真冬くんのもとに近づいて、顔を覆う手のひらを優しくとる。
『……大丈夫だよ、私の王子様?』
なんて、微笑んだ。
END
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いるよ - あああああああああああ!!!最高です!!なんか最後のところ泣いちゃいましたwヤンデレにハマってしまった…素敵な作品ありがとうございました! (2022年12月7日 0時) (レス) @page45 id: 7464634473 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2022年3月9日 1時) (レス) @page45 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
月次 - 僕の好みどストライクのヤンデレです!とっても面白かったです。これでもっと想像の幅が広がる…!ありがとうございました! (2021年3月28日 9時) (レス) id: 34cc41e784 (このIDを非表示/違反報告)
一ノ瀬かるら(プロフ) - 心臓が泣き叫んでおります大歓喜 (2020年8月23日 0時) (レス) id: 018ad8bd5d (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» 本当にいつもありがとうございます……!!マーライオンwwwそのくらい泣いてくれたんですね!嬉しいです!私も目からマーライオンです!はい!楽しみに待っていってください! (2020年2月25日 7時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餡 | 作成日時:2020年1月6日 22時