36.後悔と懺悔 ページ36
「はい、あーん」
彼に閉じ込められてから、数日がたった。
相変わらず部屋から出られなくて、そして何故だか部屋にトイレやお風呂が設置されている。
なので、部屋から出る必要もない。
何かしようとすると、彼はすぐ血相を変えて怒ってくる。
ここは君のための空間なんだから、何かしなくてもいいって。
君がここにいてくれればいいって。
普段の真冬くんから言われたらきゅんとくるだろうけど、何より外に出れないの上に何もできないが重なると、ストレスも上がるのだ。
『あ、あの…真冬くん』
「なあに?」
まるで、恋人に微笑むように
頬を赤く染めて彼は笑う。
こんな笑顔も、こんなことがなければ素敵に思えたのに。
『なん、で、こんなこと……したの?』
そう問いかけると、彼の笑みがすぅっと消えていく。
触れてはいけなかったのか。
ビクビクと震えながらその回答を待つ。
「……嫌いな僕のことなんて、しらなくてもいいんじゃないかな」
『そ、それはっ…!』
真冬くんにうまく丸め込まれ、なす術を失う。
今は、いい人とは思えない。こんなことをしてるんだもの。
でも、何処かで、彼の心に寄り添ってみたいって言う気持ちがある。それは小さくて、心のはしっ子にあるような思い。
『わ、たし……わたし、ほんとは……』
「ごめんね、君の話す言葉一言一句聞き逃さず聞きたいんだけど、そんな言葉は聞きたくない」
『っ……』
その瞳にうつる闇は本物で、物怖じしてしまう。
彼はそう答えたあと、私の手をとる。
「ここにいれば、もういじめっ子達に水をかけられたり、なにもしてないのにつき倒されたりしない」
「ずっとずっと、僕と一緒にいよう?」
ずっと、一緒に。
その言葉が強く印象に残る。
駄目なのに、こんなこと、駄目に決まってるのに、
何処か嬉しいのは、なんで?
怒ってあげなきゃ、
なのに、胸がいたい。
嬉しい気持ちと、悲しい気持ち、混ざりに混ざって、ぐちゃぐちゃになってる。
『真冬、くん……』
「大丈夫だよ。僕がなんでもしてあげる。悲しいことも、苦しいことも、辛いことも、全部忘れさせてあげるから」
ぎゅっ、と真冬くんに抱き締められて、頭を優しい手つきで撫でられる。
その冷たい手のひらは、やけに暖かく思えた。
真冬くんが、純粋に私を好きだっていってくれたら、よかったのに。
こんなことしなくても、好き………なのに。
大嫌いって、いっちゃった。
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いるよ - あああああああああああ!!!最高です!!なんか最後のところ泣いちゃいましたwヤンデレにハマってしまった…素敵な作品ありがとうございました! (2022年12月7日 0時) (レス) @page45 id: 7464634473 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2022年3月9日 1時) (レス) @page45 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
月次 - 僕の好みどストライクのヤンデレです!とっても面白かったです。これでもっと想像の幅が広がる…!ありがとうございました! (2021年3月28日 9時) (レス) id: 34cc41e784 (このIDを非表示/違反報告)
一ノ瀬かるら(プロフ) - 心臓が泣き叫んでおります大歓喜 (2020年8月23日 0時) (レス) id: 018ad8bd5d (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» 本当にいつもありがとうございます……!!マーライオンwwwそのくらい泣いてくれたんですね!嬉しいです!私も目からマーライオンです!はい!楽しみに待っていってください! (2020年2月25日 7時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餡 | 作成日時:2020年1月6日 22時