35.王子何て大嫌い ページ35
「案外簡単に堕ちてくれて、とっても嬉しかったよ」
堕ちて、くれて……。
真冬くんは、私のことを、なんだと思っているの?
そんな、
じゃあ、あのとき、いじめの時助けてくれたのは、
善意じゃなく、真冬くんの自己満足?
私を、助けたかったからじゃなくて、
私を、惚れさせたかったから?
『……ど、して……なんで、』
ホロリ、と涙がこぼれる。
あのときもらった温もりは、
助けてもらったときの優しさは、
全部、嘘だったの?
『信じて、たのにっ!……なんでっ!……なんでぇっ……!!』
くしゃり、と彼の服を掴む。
私が泣いていようと、彼はにこにこと笑っている。
私のことを、物だとしか思ってないの?
知りたくなかった。彼の、こんなところ。
「これまで信じていても、これから信じなくても、いいよ。
僕が、君を信じてるから、僕の体も心も、心臓も、この身全て、君にあげるから」
なん、で。
真冬くん、どうして?
『バカっ……!まふゆくんのバカぁっ!……だいっきらい!!……嫌い!!』
「僕は君のこと愛してるから大丈夫」
『何が大丈夫よ!……全然大丈夫じゃない!何も嬉しくない!そんなの!そんなの!』
ただ普通に、
貴方と仲良くしたかった。
貴方と笑いたかった。
貴方と恋がしたかった。
『真冬くんなんか、だいっきらい……!!』
嫌い。嫌い。嫌い。
真冬くんなんか、真冬くんなんか!真冬くんなんか!
嫌い。大っ嫌い。
「……フフ、なんて言おうと、君は僕から逃げられないよ?」
『なっ……!』
「安心して?君は病気にかかって治療中ってなってるから。学校はいかなくていいんだよ」
そ、んな……。
どうすれば、私は……。
そうだ!
天宮くんに……!
鞄!鞄は……!
周りを見渡して鞄を探す。でも、この経やにあるのは、ひとつのベッドだけだった。
「君の鞄は僕が預かってるよ?」
心が読まれたのだろうか。
突き刺さるように言われた言葉に、私は絶句をしざるを得なかった。
もう、ダメだ。逃げられない。
窓もなく、あるのは冷たい壁だけ。
ひとつだけの出入り口は、きっと彼が閉めてしまう。
私は、私はどうすればいい?
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いるよ - あああああああああああ!!!最高です!!なんか最後のところ泣いちゃいましたwヤンデレにハマってしまった…素敵な作品ありがとうございました! (2022年12月7日 0時) (レス) @page45 id: 7464634473 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2022年3月9日 1時) (レス) @page45 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
月次 - 僕の好みどストライクのヤンデレです!とっても面白かったです。これでもっと想像の幅が広がる…!ありがとうございました! (2021年3月28日 9時) (レス) id: 34cc41e784 (このIDを非表示/違反報告)
一ノ瀬かるら(プロフ) - 心臓が泣き叫んでおります大歓喜 (2020年8月23日 0時) (レス) id: 018ad8bd5d (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» 本当にいつもありがとうございます……!!マーライオンwwwそのくらい泣いてくれたんですね!嬉しいです!私も目からマーライオンです!はい!楽しみに待っていってください! (2020年2月25日 7時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餡 | 作成日時:2020年1月6日 22時