3.再会の確認 ページ3
職員玄関を案内すればいいかな。
そう思いながら、門を潜る。
少し躊躇ってしまったが、もう入ってしまったのだ。
背に腹は変えられない。
『えっと、こっちです』
「ふふ、親切な方でよかったです」
促すように声をかけると、彼からはお世辞の言葉が聞こえる。
親切?そんなことないのに。
『全然、親切なんかじゃないですから……』
あはは、と遠慮を込めて苦笑いを浮かべる。
親切な人に申し訳ない。
私みたいなやつが親切だなんて。
「それでも、僕を助けてくれたことには変わりませんよ」
優しい笑顔を見せてくれている貴方が、本当の親切なんじゃないのか。
そう言いたいけど、相手に反論することになる。
いじめの影響で反対、反論、意義、のすべてが言えなくなるという癖がついてしまったため、正直いって怖いのだ。
きっと、この人も私がいじめられているのを見れば離れていくんだろうな。
『あ、あはは……』
なんて愛想笑いをかけているうちに、もう職員玄関だ。
ここから先は、私の正念場となる。
「ここまで案内してくださって本当にありがとうございます」
……義理を大切にするいい人なんだな。
彼のもとから良いイメージが、更に良くなっていく。
多分聖人か何かになれるほどの善人なんだろう。
『い、いえ!それでは……』
それでも、私は、早く行かなくては。
いろいろと対処をしなきゃいけないのに。
『___え?』
パシッ、と音をたてて、腕が力強く掴まれた。
驚きのあまり振り替えると、そこには先程の彼が、私の手首を掴んでいた。
「あの、また会えますか」
その頬は少し赤みがかっていて、
きっと、女の人なら誰でも惚れるだろう。
また、会える?
何処で?学校で?
私が、いじめられている姿を見られてしまうの?
あんな、無様な姿を?……
嫌だ。せめてこの人の前ではただの普通の人間になりたい。
『……あはは、わかんないです』
そう言って笑ったあと、彼の瞳は大きく見開いていた。
きっと、会えるって信じていたんだろう。
裏切るようなことをいって悪いが、
いじめっ子に遭遇したら彼も危ない。
だから、もう彼と私は会うべきではないのだ。
彼の手から逃れて、背を向けて歩いた。
.
「わからない、か」
彼女が去ったあと、
この場所は陰影な空気に包まれていた。
「僕のお姫様は、やっぱり僕のお姫様だ」
にっこり、と口角をあげて。
闇はただただ深まるばかり。
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いるよ - あああああああああああ!!!最高です!!なんか最後のところ泣いちゃいましたwヤンデレにハマってしまった…素敵な作品ありがとうございました! (2022年12月7日 0時) (レス) @page45 id: 7464634473 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2022年3月9日 1時) (レス) @page45 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
月次 - 僕の好みどストライクのヤンデレです!とっても面白かったです。これでもっと想像の幅が広がる…!ありがとうございました! (2021年3月28日 9時) (レス) id: 34cc41e784 (このIDを非表示/違反報告)
一ノ瀬かるら(プロフ) - 心臓が泣き叫んでおります大歓喜 (2020年8月23日 0時) (レス) id: 018ad8bd5d (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» 本当にいつもありがとうございます……!!マーライオンwwwそのくらい泣いてくれたんですね!嬉しいです!私も目からマーライオンです!はい!楽しみに待っていってください! (2020年2月25日 7時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餡 | 作成日時:2020年1月6日 22時