2.訪問者 ページ2
『……いってきます』
誰もいない我が家の一軒家に挨拶をして、地獄の朝が始まる。
朝早く。誰もいないような時間帯で、私はバスに乗る。
基本バス通学なので、独りで登校している。
友達とだなんて、行ったことすらない。
そして、学校についた。
学校が好きな人は、普通にいると思う。
でも、私は嫌いだ。
嫌いという次元じゃない。大嫌いだ。
それでも行かなきゃいけない。
親にお金を払ってもらってまで通わせてもらってるんだから。
行かなきゃ、いけないのに……。
やっぱり、今日も足が動かない。
早くいかないと、机の落書き、消せる時間もない。
隠された上履きを、探す時間もない。
画鋲の張られた椅子を、治す時間もない。
行かなくては。いかなくてはいけない。
でも、どうしても今日は怖い。
門を潜る瞬間で、私は固まっていた。
端から見れば、ヤバイ人だろう。
でもそれくらい、学校が嫌なのだ。
……今日も、今日もパシられる。
今日も、オモチャにされる。
それでも、行かなくちゃ。
ぎゅっ、と鞄を握りしめる手を強めたときだった。
「……あの、ちょっといいかな?」
『………………へ?』
少し高めの、とても綺麗な声が聞こえた。
皆が皆、見て見ぬふりをするから、いじめっこと、先生以外の声なんて聞こうともしなかった。
振り替えると、そこには私と同じ制服を着た男の子がいた。
さらさらとした耳元までかかる黒髪を靡かしながら、
真っ白な肌は太陽の光を浴びて、優しげに、そして妖艶に輝いていた。
とても、綺麗な男の子だった。
『あ、あのっ、……な、なんでしょうか』
真面目に話そうとしてくれた人に出会ったのは、いつぶりだろうか。
問い掛けられるのは久しぶりで、戸惑ってしまう。
その男の子はにっこり、と微笑んで、また薄い唇を開いた。
「僕、転校してきたんですけど、職員室がわからなくて……」
……あ、なるほど。
すぐに納得した私は、すこし安堵した。
いじめっ子と話すときは、いつも嫌味ったらしく言われ、
人権なんてくそくらえの発言をされるから。
『わ、わかりました。あの、良かったら、案内しますよ』
おどおどと、焦りながら告げる私に彼は、
「ありがとうございます」
また、にっこりと微笑んでくれた。
とても優しい笑顔だった。
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いるよ - あああああああああああ!!!最高です!!なんか最後のところ泣いちゃいましたwヤンデレにハマってしまった…素敵な作品ありがとうございました! (2022年12月7日 0時) (レス) @page45 id: 7464634473 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2022年3月9日 1時) (レス) @page45 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
月次 - 僕の好みどストライクのヤンデレです!とっても面白かったです。これでもっと想像の幅が広がる…!ありがとうございました! (2021年3月28日 9時) (レス) id: 34cc41e784 (このIDを非表示/違反報告)
一ノ瀬かるら(プロフ) - 心臓が泣き叫んでおります大歓喜 (2020年8月23日 0時) (レス) id: 018ad8bd5d (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» 本当にいつもありがとうございます……!!マーライオンwwwそのくらい泣いてくれたんですね!嬉しいです!私も目からマーライオンです!はい!楽しみに待っていってください! (2020年2月25日 7時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餡 | 作成日時:2020年1月6日 22時