王子様のお姫様【まふまふ】

1.プロローグ ページ1

「………………やっと見付けた」


それは、狂喜に満ちた声だった。

街中の路地裏で、蠢く黒い影。
まるで獲物を見付けた狼のよう。



「待っててね、俺のお姫様？」


その美貌的な顔の口角は、
ただひたすらに、上がっていた。









************




この世界は、私に冷たい。

物心ついたときから、父はいなく、母は仕事に没頭していて、いつも一人だった。
それだけなら、まだよかった。

一人きりの食卓も、
一人きりの朝も、
一人きりの家も、

まだ、我慢できた。





だけど、中学になってから、いじめられるようになった。


皆が皆私のことを見て見ぬふりして、
先生に相談しても構ってくれやしなかった。

お母さんは単身赴任で仕事の連絡もつかなかったし、


とにかく最低な中学時代だった。
そして高校も、同じ。



同じような人たちにいじめられて、同じようなことをされて。

辛いといっても、世界は平等……いや、残酷に、回っている。





私なんかの幸せなんか、これっぽっちも考えてくれないのだ。

2.訪問者→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す