24 ページ24
『A……?』
あれ、私の名前じゃん。
いや、たぶん違う人なんだろうけど……。
でもなんか、モヤモヤする。なんだろう、この気持ち。
「Aって名前的に女だな。男の神だったんじゃ……って、どうした?」
『あ、わ、わたし、Aって、名前で……』
「うえっ!?まじかよ」
『う、うん。驚いてる』
「まあどうせ名前が被っただけだろうけど」
『そうだけどさ……』
やっぱり、なにかがつっかえて離れないな。
この気持ち、どうしたらいいんだろ。
その時だった。
「Aっ!!避けろ!!」
__________え?
素早い速度で、それはやって来た。
私は咄嗟に身を沈めしゃがむ。
シュンッ!!そんな音をたててそれは頭上を通った。
そして、壁に突き刺さっている。何やら手裏剣のような……。
一体何!?
手におさまるたぬきの突然の声と投げられたものに混乱する。
振り替えると、そこには黒い影がたっていた。
「ここは人間の住む場所じゃないんだ。出てってくれる?」
「おい、お前、忍だな!」
「ご名答。どうしてわかったの?たぬきさん。まあ、どうでもいいや。」
聞いたことのない声。
見たことのないシルエット。
怖い。怖い。恐怖が私を支配する。
そして、その目は私を見下した。
「…………あれ、君。愛し子?」
『い、いとし……?』
「神や精霊、妖精に愛された人間だよ」
『え、そ、そんなの……』
わ、私、神はそらるしか知らない。
ビクビクと小刻みに震えるからだ。
目の前の威圧感に押されて体が動かない。
「へえ、どうやら神に愛されてるらしい」
「おいっ!Aをどうする気っ!?……」
「たぬきは黙ってて」
『あっ!……』
たぬきはその影に持ち上げられ、ピョイっと投げられる。
どさりと落ちる鈍い音に目をつむると、影は至近距離にあった。
顔が近い。
怖い。殺される。
「……でも、神の妻や愛人でなさそうだ」
『ひっ、……』
「ねえ、君、生け贄でしょ?あの海を跨いだ生け贄」
『えっ……』
な、なんで。
何でその事を知ってるの?
少なくともそれを知ってる人は、天界にはいないはず。
「もとの世界に帰りたくない?帰れる方法、知ってるよ?」
『かえ、れる……?』
元の世界に?
あの村に?あの場所に?
その影は、耳元でささやいた。
「明後日、ここに神の血をもってきておいで。君を返してあげる」
影はそれだけを告げて、すうっと消えていった。
233人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2021年9月26日 13時) (レス) @page42 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
しろむ(プロフ) - 2ヶ月ほど占ツクを離れていたら、完結していてビックリです!うぐいすあんさんの作品大好きです。今回も素晴らしい小説ありがとうございます (2020年1月31日 21時) (レス) id: 3eaa2e0c73 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - すばるさん» 私もすばるさん好きです〜!そらるさんの可愛さを最大限引き出せましたかね!?こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» いつもありがとうございます!優勝できましたイエーイ()今回はほんわか系を書いていたのでどうしても過去編がシリアスになってしまいました……。はい!楽しみにしていてくださいね!ご満足できるような作品を作れるよう頑張ります! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - らfkー(らふきー)さん» ありがとうございまrrrrrrrrrrrrrrrrrrす!過去編はかなぁり凝っているので、泣いていただくほどのお話ができてとても光栄です! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鶯餡 | 作成日時:2019年11月10日 22時