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「………………ごめんね」
ある程度なかに入った途端、その手は離された。そして、私に背を向ける彼がいる。
その背中は大きくも、何処か憂いげにたたずまっていた。
『何に謝ってんの』
そう問いかける。
別に私はなんとも思ってないし。
「俺、Aに名前教えなかった」
『あ、そらるなの?』
「あだ名がそうなんだ」
『へえ』
これからそらるってよぼう。
何気に神って呼ぶのなんかいやだったんだよね。
ここは神の世界で、神なんてそこら中いるはず。
『でもそらるって、変な名前。普通神様ってっと……』
「親友に、つけてもらったんだ。遠い遠い親友に」
『親友?遠いの?』
「うん」
もしかして離れて暮らしているだとか。
てか神の親友って紙なのかな?
それに、神って親友から名前もらうもんなのか?ずばずば突っ込みたくなるが、中々そういう空気ではない。
そらるはゆっくりと体を振り返り、口を開く。その表情は、背中と同じように寂しげな顔だった。
「その、神の本名は
『つがい?きまり?』
「まあ、簡単に言うと運命が決めた俺の奥さんってこと」
あれ。
ちくり。胸が痛む。
『え、いるの?』
「いないからっ!そらるさんは乙女だからいないのっ!」
なんだ。よかった。
って、なんで安心してるんだ私。
それになんだ乙女って。
『お前男だろ?』
「か、神に性別なんて概念はないのだよ」
『じゃあ脱げ』
「いやっ!こんなところで脱ぎたくない!」
『ついてるもん確認する』
「ねぇAって女の子だよね!?ねぇ!?なんでそんなに積極的なの!?怖い!」
『お前が乙女だからっていうからだろ!!バカ!!』
「はあ!?バカじゃないしぃ!天才だしぃ!」
『お前は天才じゃなくて天災!!災害のほうだろ!』
むー、とお互い見合う。
そしていつしか、二人には笑いが生まれていた。
こんなに楽しい日々は、いつぶりだろうか。
“____「あぁ!そういうとこ愛してる!」”
“____「はあ!?俺だって愛してるし!」”
……もう、あの日々には戻れないってこと、わかってたはずなのに。
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ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2021年9月26日 13時) (レス) @page42 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
しろむ(プロフ) - 2ヶ月ほど占ツクを離れていたら、完結していてビックリです!うぐいすあんさんの作品大好きです。今回も素晴らしい小説ありがとうございます (2020年1月31日 21時) (レス) id: 3eaa2e0c73 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - すばるさん» 私もすばるさん好きです〜!そらるさんの可愛さを最大限引き出せましたかね!?こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» いつもありがとうございます!優勝できましたイエーイ()今回はほんわか系を書いていたのでどうしても過去編がシリアスになってしまいました……。はい!楽しみにしていてくださいね!ご満足できるような作品を作れるよう頑張ります! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - らfkー(らふきー)さん» ありがとうございまrrrrrrrrrrrrrrrrrrす!過去編はかなぁり凝っているので、泣いていただくほどのお話ができてとても光栄です! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餡 | 作成日時:2019年11月10日 22時