19 ページ19
自分の膝の下で、無防備に眠る少女を見つめる。
その幸せそうな寝顔を見つめるだけで、唇は綻んだ。
そんな中、それを止めるようにノックがなる。返事をして見ると、出てきたのは……。
「___あれ、そらるさん？」
「Aはどこーってなってたけど……、ここにいたんだね」
「はい、なんか悩んどるらしくて、子供みたいに泣きわめいてましたよ」
きっぱりとした服の上には、彼専用の白衣がある。
少し裾が多いらしく、いつも手を隠しているそうだ。
腕を後ろに回し、俺の方に近づいてくる。
きっと、A様を見たかったんだろう。
「___わ、寝顔超かわいい」
「でしょでしょ！？めっちゃかわええんですよ」
「きっと泣き顔もかわいかったんでしょ？」
「んーや、今回は見えへんかったです」
クスクス、と二人で笑う。
そんな言葉を交わしても起きないA様は、きっと熟睡なんだろう。
かわええなぁ……。そう思うだけでも、口元が緩む。
「__真冬に聞いたことがある。Aのお母さんは、Aが幼い頃に死んでしまったって」
「__それは、辛いですね」
「あぁ。それで今のこの屋敷の当主、お父さんが男手ひとつで育てたから、甘やかしすぎてわがままになったらしい」
「そう、なんですか……」
目線をしたにおとし、彼女を見る。
気持ち良さそうに、口元さえ今は綻んでいるというのに。きっと辛い思いをして来たんだろう。
その額に優しく触れて、撫でてやる。
大丈夫。大丈夫。そんな意味も込めて。
「___母親って、なんだろうな」
「んえ？」
「いーや、なんでもない。俺も母親いかなかったからさ、……少しだけ、わかるよ」
切なげに微笑んだそらるさんは、A様を見る。
そらるさんとA様は、きっと何処か違って、何処か同じなのだろう。
二人は、父親だけで生きてきたんだ。
でも、俺は____
両親の優しい愛も、言葉も、声も、何もかもをもらって生きてきた。きっと幸せな人生を送ってきた。
___なのに、二人を置いてきてしまった。大切な二人を。俺の浦田さんを追いかけるというわがままで。
今、どうしてるんかな。
窓を見つめる。
真っ青な空は、その純白さを物語っていた。
*******
真冬さんだけでなく、坂田さんにまで膝枕してもらったお嬢様。強し。()
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 778人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです！結ばれたあとのお話が欲しいです！ (2020年1月15日 20時) (
レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - mokoさん» ありがたいです……！！！ですけど、きちんとお目目休めてくださいね！……ありがとうございます！！頑張ります！(Ｏﾟ皿ﾟＯ) (2019年10月3日 23時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 絆さん» はい！やから始まってので終わる鶯餡です！ありがとうございます！！！！私ハッピーエンド主義者なので、そこ思いが伝わっていましたらとても幸いです！はい！頑張ります！(返信遅れて誠に申し訳ございません……) (2019年10月3日 23時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
moko - 最初から最後まで１日で読みきってしまいましたww次の日学校なのにオールしましたwwすっごい面白かったです！これからも頑張ってください！応援しています♪ (2019年9月30日 5時) (レス) id: 711f63988a (このIDを非表示/違反報告)
絆 - やからはじまってので終わる鶯餡さん！！鶯餡さんの作品大好きです！！鶯餡さんの作品はどの作品を読んでいても心が暖かくなります！これからも楽しみにしています！無理はなさらないでください！ (2019年9月7日 19時) (レス) id: da343c4ed4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
