【完結】あのね、ずっと好きでした。【KY】

26話 ページ26

｢あらキヨ君似合ってるわ！｣

お母さんがきゃあきゃあと甲高い声をあげる。
キヨ兄ちゃんは少し照れた様に片手で首元を押さえた。
キヨ兄ちゃんもお父さんのお下がり(押し付けられた)を着ている。
ただ私とは比べ物にならないぐらい似合ってる。
グレーの着物で誰にでも似合うはずなのにキヨ兄ちゃんのために作られた着物みたい。
ぽーっとキヨ兄ちゃんを見つめていると、目があった。
キヨ兄ちゃんは遠慮がちに私の姿を見ると、可愛いなと呟いた。
え、かわ、可愛い！？

｢あ、ありがと｣
｢すげぇ似合ってる｣
｢キヨ兄ちゃんもね｣

2人でぎこちなく笑うと、お母さんは微笑ましそうに私達の背中を押した。

｢2人とも、お小遣いはある？あげようか？｣
｢お母さんいくつだと思ってるの！｣
｢キヨくんもAもいくつになっても私達の子供よ。甘やかしたいの｣

お母さんは終始笑顔で、私達に行ってらっしゃい！と声をかけた。
まだ少し照れて恥ずかしい私達はゆっくり駅に向かった。
駅に近づくにつれ人が多くなり、改札になると人がごみごみしていた。
キヨ兄ちゃんはうっと顔歪めると、眉を思いっきり寄せた。人混み嫌いだもんね。
2人で切符を買い、電車を待っているとキヨ兄ちゃんがさりげなく私の肩を支えてくれている。
人混みに流されないように。
少し、いやかなり嬉しい。
キヨ兄ちゃんに怪しまれない程度にくっついた。
えへへ…幸せ。
そして私達は電車へ乗り込み、花火会場へと向かった。
電車の中でも浴衣をきた男女が多かったけど、さすが会場。
色んな色の着物をきた男女が沢山いる。
そしてその大数はカップルだ。
私達もカップルに見られてたらいいんだけど…。
ちらっと左にいるキヨ兄ちゃんをみると、キラキラと目を輝かせ前方をみている。
どうやらたこ焼きと焼きそばの屋台に釘付けのようだ。
キヨ兄ちゃんは私の視線に気づいたようで、ニッと笑うと行こうぜと私の肩を掴んで引き寄せた。
今私がどんな顔してるかなんてキヨ兄ちゃんは興味ないんだろうな。
掴まれた肩の熱を払うように、キヨ兄ちゃんから視線を逸らした。
キヨ兄ちゃんはたこ焼きと焼きそば、ついでにポテトとフランクフルト。綿あめにお好み焼き…っておいおい。

｢お前も手伝えよ｣

ニヤリ、とキヨ兄ちゃんが笑うとひとつの袋に食べ物をまとめ空いた手で私の手を握った。

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