【オリオンの刻印】日本の女神？元通り魔ですが (ページ32)

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第28人目恐るべき子供達(下) ページ32

「どういうことかね……」
インカムが拾った声に戦慄を覚える。
疑問を発する唇が震える。
「光……俺はやってやるからな
光が手術を受けれるんだ、俺はなんでもするからな……」

光、光……
ゴーレムの手紙！
「光様へ。お手紙ありがとうございます。日本代表のみんなは仲良く練習しています。」
盗聴は思考の糸を繋ぎ止めてしまった。

バリン!
何かが割れる音が私の中で響く。
粉々に砕け散る。
あのカメラのように崩れる。
私が、破綻する。
頭がぐらんぐらんする。
まともに立てなくなって床にへばりつく。
……落ち着け、
深呼吸深呼吸。
まずそんなもの存在しない。
それすら嘘の可能性もある。
一星にまともらしい背景なんてない。
一星は必要悪ではない。
完全なる悪人、でしょ？

「まさか公衆電話でかかってくるとは」
「携帯持ってないんです」
「おいおい、今時珍しいな」
紅茶2つをオーダーした。
「……今日は貴方を信用して電話を掛けました。ですが完全に信頼し切れません。そもそも貴方にメリットが無いんですね＿＿紀村さん？」
一星の独白を聞いた翌日、私は名刺の番号に電話した。そして数日後に会うことになった。
「ふうん……でも実はそんなこと無かったりするんだよねぇ。僕は欲しかったのはコネ、つまり日本代表との繋がりなんだよ。君みたいなね。記事を書いてる身としてはお金より大切だよ」
「そうですか」
その声も目も嘘はない。少なくともそう思った。
「それで？何が訊きたい」
「お待たせしました。紅茶でございます」
話を切るように店員が紅茶を持って来た。
何とも言えない間ができて紅茶をすする。
後味が変に苦かった。
「一星充のことです」
「へぇ……でもなんで、って訊いたら駄目なやつだね？僕に秘密で依頼するってことは」
「まあそんな感じです」
「だろうね。コネをフルに使ってみよう」
「お手数お掛けします」
「ショートケーキです」
割り込むように店員がケーキを運んで＿＿ん？紀村さんか？
「はいどうぞ」
「えっ、私？頼んでませんけど」
「僕からだよ。予選3回戦進出おめでとう。あっ全部奢るからね」
「すみません、ありがとうございます」

「今日はありがとうございました」
「いいえ。今度持ってくるよ、携帯」
「じゃあ私行かなきゃなんで、さよなら」
あの人は今のところ大丈夫か？

帰る途中に目にした。
不良にスマホを見せる一星。
パシャっ
……これ売ったらどうなるんだろ