中島敦の親友 (ページ16)

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親友14人ページ16

「い、いい嫌ですよ！それってつまり、餌じゃないですか！誰がそんな…

「報酬出るよ。」

「えっ。」

報酬と云う言葉に、思わず揺らぐ。
…虎だって、もうこの辺りからいなくなってるかもされないし……いやいや、でも。

「国木田くんは社に戻ってこの紙を社長に。」

「おい。一般人を巻き込む気か？まずは情報の裏を取って……。」

「いいから。」

僕が悩んでいるのを、了承したと捉えたのか、トントン拍子に話が進んでいく。
太宰さんに、ちゃっかり報酬金額も提示されて、半ば反射的に首を縦に振った。

『待って敦、私は反対。』

勢いよく立ち上がったAに、その場がしんと静まり返る。
その目には焦りと少しのいかりが浮かんでいて、思わず目をそらした。

『そんな危険なことやらなくていい。何かあっても、守ってもらえないかもしれない。』

危ないことしないで、と肩を掴んできた手には、力が入っていて。どれだけ心配してくれているのか、何て云わずもがな伝わってくる。
太宰さん達を信用していない、と云っている様なものだけど、今は置いておこう。

『敦に何かあったら……私どうすればいいの…！！』

「A……。」

僕に万が一のことがあったら、仕事も居場所も捨てたAは、見知らぬ土地でただ一人。
それは逆に、僕にも云えることだった。

彼女がもしも、万が一にも居なくなってしまったら。

そう考えると、確かに怖い。でも……。

「今まで通りじゃ、駄目だから。いつまでもAに甘えてちゃ……。」

この仕事を受ければ、まとまったお金が入る。

そうすれば、Aにばかり負担を強いる生活から脱出できるかもしれない。

「だからお願い。虎探しの手伝い、とめないで欲しい。」

首を縦に振りつつも、ゆらりと迷うように揺れた瞳は何を意味していたのか。

この時の僕には分からなかった。