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宏太side
宏「 なかなか来れなくてごめんな 」
さらさらなその髪を撫でながら
そう言った俺の言葉を
すやすやと気持ち良さそうに眠る彼は
きっと、聞いていないのだろう。
俺が来る前に光達が来てたのか
花瓶の花が新しく変えられている。
宏「 ……宿題やんなきゃ 」
高3の冬ともなれば
勉強にも力を入れなきゃいけない時期で。
今目指してるのが医学部なのもあって
必然的に塾に通うしかなく。
終わる時間も遅いため
此処へ来る頻度は愕然と減った。
今日は運よくコマ数が少なくて
面会時間には間に合ったけど
楽しく会話するには、一足遅かったようだ。
山「 おぉ、来てたの 」
静かな部屋に響いた声に顔を上げると
点滴パックを持った山田先生こと、山ちゃん。
机に広がった教材を見てか
学生は大変だねぇ…なんて言う彼は
少しやつれた表情だった。
山「 ……へぇ、医学部なんだ 」
宏「 えっ、あぁ。受かるか分かんないけど 」
山「 ふぅ〜ん…… 」
自分から聞いたくせに
その返事は何処か他人事で。
無表情で点滴を変える姿に
ちょっと物足りなさなんて感じたり。
そんな感情が顔に出てたのか
あっ、そうじゃなくて…なんて焦りだして
山「 あのぉ……慧のこと。
医学部ならそれなりにさ、その… 」
宏「 病気のこと、でしょ? 」
俺がそう言えば
やっぱ調べるかぁ…と笑い
隣に椅子を並べ、向き合うように座った。
山「 どこまで分かっちゃってる感じ? 」
宏「 移植…って事ぐらいは 」
慧の病気は先天性のもので
確かに手術で治る事もあるらしい。
でも今の状態からしてたぶん
もう不可能に近いんだろうなって。
そうなった時に残る希望は
心臓移植、そのたったひとつだと。
いろんな本を探しても
それ以外の道は、見つけられなかった。
山「 そっか…まぁ、正解なんだけど。
順位がさ、厳しいんだよね… 」
宏「 それってつまり……移植も難しいって事? 」
何も答えず俯く彼の行動は
俺の質問を認めた事を表すから。
何とも言えない空気が、どうしても流れる。
山「 ほんと……笑っちゃうよね 」
医者なのにさ…と悲しい笑顔で呟いた声は
今にも消えそうなほど小さくて。
悔しさからか強く握られた拳が
小刻みに震えていた。
今直ぐにでも救いたいのに
自分の力ではどうにも出来ない、もどかしさ。
それは彼だけじゃない…俺だって。
皆がそう思ってるんだよ、いつも。
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新道踏切(プロフ) - 最近見つけて読んだら止まらなくなりました!更新楽しみにしてます(●´▽`●) (2021年1月3日 16時) (レス) id: 7158c48a17 (このIDを非表示/違反報告)
りみ(プロフ) - にゃごさん» コメントありがとうございます!ほんとに嬉しいです!!これからも読んでいただけるよう頑張りますね! (2020年3月27日 20時) (レス) id: 5d5b508ed3 (このIDを非表示/違反報告)
りみ(プロフ) - のぶちゃんさん» お待たせさせてしまいすみませんでした。コメントありがとうございます!!今後もどうかよろしくお願いします!! (2020年3月27日 15時) (レス) id: 5d5b508ed3 (このIDを非表示/違反報告)
りみ(プロフ) - みおさん» お待たせしてしまい申し訳ないです。コメントありがとうございます!!今後もよろしくお願いします!! (2020年3月27日 15時) (レス) id: 5d5b508ed3 (このIDを非表示/違反報告)
りみ(プロフ) - いのひかゆうやさん» 遅くなりましてすみません。コメントありがとうございます!!今後もよろしくお願いします!! (2020年3月27日 15時) (レス) id: 5d5b508ed3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りみ | 作成日時:2017年10月15日 13時