Half step【3】 (ページ10)

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何も反応できない私

「さすがに口はあかんかなって。」

ほっぺにちゅうの感想は、不意打ちと一瞬すぎて、満喫することもなく、たいしてわからなかった。

「この反応は、なに…？」

事態を整理してたらまた近づく彼の顔。

「正門くん！」

目の前にまで来てた彼の顔を手のひらで防ぐ。

手のひらに当たった彼の唇から、さっきわからなかった柔らかさを感じるし、彼の顔は今見た事もない艶のある男の顔で、条件反射的にドキッとする。

「いや…？」

「そうじゃなくて…
恥ずかしいんだけど、私…彼氏できるのすっごい久々で。
慣れてないのこういうの」

大学の時以来やから、たぶん5年とか？
恋愛経験ないのに、婚活はしてたって、自分で言うのもアレやけど、…ちょっと悲しい。

「それに前の彼氏は、…友だちみたいな関係だったから、そういう感じにならなくて。」

「…うん。」

「なんというか、その
…お手柔らかに、お願いします…」

優しい顔した彼が見下ろしてた。
細めた目、緩んだ口元にほっとして、肩を下ろす。

「はい、わかりました。」

ふふ、と笑みをもらして、おどけたような声色で。
でも丁寧な口調で話すところが、彼らしい。

「そんな焦ってないから。
今日はなんもせんよ。」

ん？
今日は…？

腕をほどくと、先に靴を脱いだ彼が、腕を取って部屋に上がらしてくれる。

けど、さっきの言葉が引っかかった私は、きっと固い顔をしてたんだろう

「え？ちゃうん？」

また足を止めて、私を振り返る。

引かれるかな、とか思ったけど、うやむやにスルーするなんて出来なくて、意を決して口を開く。

「『今日はなにもせん、』って。
…それは、キスの先のこと？」

「まあ、おいおいは
…もしかして、」

「ない。…初めて、なの。」