Half step【3】 (ページ7)

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なのに、

「ううん。目の届く範囲にいてくれるのは安心する。」

可愛い、可愛い言われたあとは、こんなことを言う。
正門くんは、私のことを幼い女の子かなにかと勘違いしてるのか、というくらい壊れ物のように扱う。

私、正門くんより長く生きてるんやけど？
女の子、というよりは、大人っていう感じなんやけど

ドアを開けて通してくれたり、自然と車道側を歩いてくれたり、こういうことを自然とされると、ちょっと困る。

随分と考え込んでしまっていたらしい。

「…どうしたん？」

不安そうな顔で、こちらを見下ろす彼の目とぶつかった。

「正門くん、」

「なに？」

「あのさ、…これって普通？」

ちょうど信号に引っかかって、足が止まってしまう。
近くなる距離に、さらに心拍数が上がった気がした。

「…普通？」

「前、だいぶ前やけど、正門くん言ったやん。
駅まで送ってくんも、普通やからって。」

あの時からちょっと違和感があった。
彼の中では、なんとも思ってない女の子にも優しくするのか、って。

彼は私と違って、…こういう経験が豊富なんだろうって。

「普通やないよ。」

そう言ったと同時に、さっきまで寒いと思ってた左手が包まれる。

「彼女にだけ。」

目の前の信号が、青になる。
動かない彼におかしいと思って、顔を見上げると、固い顔した彼がいた。

「…あんときも、あんなこと言ったけど、Aさんのこと気になってたから。」

繋がれた手にギュッと力が入るのがわかった。

「やから、…壁ドンもした。」

彼にしては、歯切れの悪い言い方。
これは、経験が浅い私でもわかる。
もしかして、照れてるのか？