Half step【3】 (ページ41)

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「…Aちゃん、」

………

別れちゃったんやろうね

その言葉は、言えなかった。

「え、…西野さん、？」

「帰ろ。前に車停めてるから。」

「良規…なんで、」

「彼女迎えに来ただけやけど。」

「あ、」

藤原くんが小さく声を出したと思ったら、

「すみません！
…俺、西野さんの同期の藤原です。
今日は、はじめは後輩の女の子も一緒にご飯食べてて、今はもう帰っちゃったから、…って、言っても今の西野さん1人に男2人っておかしい、ですよね…でも俺はそんな」

「すみません、お世話になりました。」

藤原くんの言葉を遮って、車停めてるからって急ぐ彼は私の荷物を持って先を歩いていき、私は急いで彼を追いかけて店を出る。

怒ってる、というのは、聞かなくてもわかる。

先に謝りたいのに、それすらもさせてもらえない雰囲気が、向けられた背中からひたひたと伝わっている。

道の端、停められていた車に彼は先に車道側に回って運転席に乗り込む。

歩道側から急いで助手席に乗り込むと、私の膝の上にポンと置かれるバッグ。

車内に2人きりになって、この状況を少し整理する。

怒ってるのはもうどうしようもないから置いといて。

良規には、場所は知らせてなかったのに、なんでだろうか。

スマホのなにか連絡が来ているかもと思って開くと、着信が3件と新着メッセージが何件か

新着メッセージと言っても、30分も前のものだった。

「ごめん…今メッセージ見た。」

「やろうね。」

「わざわざ迎えになんて、…来てくれなくてもよかったのに。」

そう言うと、黙る車内

気まずくてしょうがなくて、つい話してしまう。

「よしのり、」

「誠也くんから連絡来た。」

私の声に被せるように乗ってきた彼の声

「佐倉ちゃんとご飯やなかったん。」

「…それは、」

「あの人ら、だれ？」

藤原くんはいいとして、大地はなんて言えばいい？

元カレ、って正直に言うのは、絶対今じゃない。

「…ごめんなさい。

2人は、誠也さんの知り合いで。
行ったら、おった。来てるの、知らんかったから。」

結局私は、隠すほか見つからなかった。