Half step【3】 (ページ39)

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「え？」

「Aとは、キス以上やってへん」

よかったんかな。

男は経験が多いほどいいって、言ったんは大地やのに。

「あ、そんなにすぐ別れたん…？」

「2年…もうすぐ3年やったっけ？」

「かな？大地ほとんど私の家に住んでたもんね」

「せやな、よぉ一緒の布団で寝かされたな。」

「で、やっぱり狭いわって言って、寝袋持ってきて。
あれまだあるよ。」

「まじで？でもあの部屋は引っ越したやろ？」

再び話さなくなった藤原くんに違和感を感じて、顔を上げると

「今江、お前すごいな」

そう言って、大地に抱きつく。

抱きつかれたまま、ビール飲む大地もすごい。

今日まで知らなかったけど、2人は相当仲良いらしい。

「違うよ藤原くん。
大地が私のこと女やと思ってなかっただけ。」

そんなに大袈裟なことを言った自覚はなかった。

けれど、結構な間をあけた後

「Aさぁ、本気で俺がそんな気なかったって思っとるん？」

俺、一応保健体育の教師やぞ？

そう言って、切り出した。

「なんで、オトコが女と付き合う？結婚したがる？
答えは簡単、自分の子どもがほしいから。」

「…大地、？」

「つまり、男は抱きたい女と付き合って結婚して、自分の子どもを孕ませる。」

起きてる時の半分は笑ってるんじゃないかと思う大地の顔は

今は1ミリも笑ってなくて

「結婚したいのに、欲がない男がおるとでも思ってんの？」

普段半開きでだらしなく開いてる口は

話してない時はきつく結ばれている

「なわけないやん、ちゃんとやってるって。」

これまでで1番オトコを意識してしまった。

あの頃と変わらない、身体、顔、声

なんで、言葉が変わるだけで、こんなに怖い？

「なんか嫌やねんけど。
今江に抱くとか孕ませるとか言われると、めちゃくちゃリアル」

藤原くんがいてくれてよかった。

「Aわかってなかったんやろ？
やから、俺は手出さんかった。」

「待って、大地が女は大事にせなあかんでって言ってたのは、」

「お前さ、それ今言う？」

じゃなかったらたぶん私は

「ブレーキかけるためやん自分に。
やろうと思えば出来たあの状況でさ、」

泣いてた。