日本の道化の月 Ⅱ【イナオリ】 (ページ44)

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９４．ページ44

ボールを受け止めようと野坂と一星は飛び上がる。

『いい……早く……早く最高の瞬間を見せてよ……！』

野坂がヘディングをしようとしたその時……一星は野坂の頭を守るようにボールを外へ出した。

『は……？』

野坂は一星の方へと近づいていく。

野「選んだんだね。本当の自分と向き合うという選択肢を。

君は色んな気持ちをずっと隠してきた。でも、何もかもを隠し続けることなんてできないんだ」

一星は野坂に差し伸べられた手を掴み立ち上がった。

野「自分の心に正直になれば、道はその先に必ず見えてくる」

稲「そうかっ、野坂は一星に選ばせたってこと！」

灰「あ？」

氷「あぁ、自分を裏切り、汚いサッカーを続けるのか、それとも本当のサッカーを追い求めて行くのか……」

灰「そんなの、どっち選ぶかわからねぇじゃねーか」

氷「今のを喰らっていたら、どうなっていたかはわからない。

野坂はあいつが正しい道を選ぶことに賭けたんだ」

稲「信じたんだな、一星を……」

皆が安堵の息をついている時、Aは決して穏やかとは言えない表情になっていた。

『なんで？どうして？こんな結末……ちっとも面白くないよ』

そんなAの様子を、サウジアラビアのオリオンの使徒、アンドレアス・ベボはジッと見ていた。

ベボ「あの女……」