酩酊と体温:I ページ8
岩「本当申し訳ない。ありがとな」
「いやいいっすよ…俺も、まさかAさんこんな酒回ってると思わなくて、飲ませすぎたかも」
岩「いや、先輩なんだから、完全にAが悪いよ。こんなの初めてでちょっとビックリはしたな」
あの日握れなかったAの右の手のひらは、いとも簡単に俺の左手に収まっている。
Aは相変わらず楽しそうにしてて、1人で喋って1人で笑っている。俺らの会話を聞いているようでもあるけど、たぶん聞けてないだろう。
「あ……照さん、Aさんいつも酔っ払うとこんな感じだけど、嫌いにならないであげて」
木村が、なんだか少し申し訳なさそうな顔で、俺にそう告げた。
岩「……嫌いになんてならねぇよ」
当たり前だ。俺は断言した。
でも、なんでそんなことを言ってきたのかが気になった。
岩「そういや、なんで俺に電話かけてきたの？俺、Aと電話したことなんてほとんどないのに」
「それは………あ、なんとなくAさんに聞かれたくないんで、秘密にしてくれます？」
岩「……え？ああ、それは約束するけど……」
左を向いたら、Aが笑顔で俺を見ていた。
そうだよなぁ。どう考えてもAここにいるよなぁ。
俺の左手あったかいもんなぁ。
Aに聞かれたらまずいのに、Aいるじゃん。
もしかして木村ってかなり馬鹿？なんて思いながら、木村をいぶかしむように見ていたら。
「あぁ、この感じだとこの人完全に記憶なくすんで大丈夫です」
そう言い切った。
ああ、これは俺の知らないAで、木村のよく知るAなんだ。
悔しいし、嫌だなぁ。そう思った。
「で、なんで照さんに電話したかっていうと、Aさんの口から呼び捨ての名前を聞くの、初めてだったからです」
木村はそんなことを言った。それを聞いて、確信する。
この木村という男は、Aのことを本当によくわかってるんだってことを。
「もう帰る場所があるんだなぁって思って、Aさんに帰りたい？って聞いたらものすごく帰りたがったんで、迷わず照さんに電話しました。出てくれてマジ助かりましたよ」
"もう帰る場所がある"という木村の言葉が重たい。
俺がそうなれているのかな。そうだったらいいな。
隣でAは、何も知らずに笑ってる。
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しょぴお - このお話すごく好きでした。今まで更新お疲れ様です。ずっと読んでました。笑 お話の終わり方がすごい、いい感じですね。このお話大好きです。 (2019年5月31日 19時) (
レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 続編待ってます。 (2019年5月30日 11時) (レス) id: f9aa5203aa (このIDを非表示/違反報告)
Momanao(プロフ) - 続編、楽しみにしてます！なんか...嵐が吹き荒れる予感が... (2019年5月16日 1時) (レス) id: a8ed6fc393 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴお - 話を読んでて泣きそうになった…。いや、泣く笑 (2019年5月14日 22時) (レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
ミックスジュース(プロフ) - なべしょに頑張って欲しい！この作品大好きです！！これからも頑張って下さい！楽しみしています(^○^) (2019年5月14日 20時) (レス) id: 6b8cfc92fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2019年2月1日 14時
