半透明 ページ21
午後3時を少し過ぎた頃。
なべしょについて考えすぎたせいで結局明け方頃にやっと眠れたあたしは、額の汗を拭いながら必死に学校を目指していた。
最悪だ。2限も3限も出られなかった。4限ももう始まってしまっている。
そして今日の4限は、なべしょと被っている授業だ。なべしょと会う恰好の機会だったのに、それが無駄になってしまう。
なんだか、一刻も早くなべしょと話さなくてはいけない気がしていた。
そうしないと、なべしょがもう帰ってこなくなってしまうみたいな、そんな気がしていたんだ。
10月に入ったとはいえ、まだまだ照りつける太陽の光は強い。こめかみから汗が伝った。
メイクは急いで最低限しただけでボロボロ。髪も巻けずに適当にくくっただけ。ただでさえ暑いのに急いだせいで汗だくで、もう最悪だ。
こんな格好でなべしょに会いたくない。
もっと、ちゃんと可愛くした姿で会いたい。
いつも家ではすっぴんの部屋着で会っていたはずなのに、そんな乙女チックな思考がよぎった。
たぶん、なべしょに会うのが久しぶりすぎるせいだ。
やっと辿り着いた校舎の中は冷房が効いていて、思わず一息ついた。すでに4限が始まっている校舎内は静まり返っている。
だから、その聞き覚えのありすぎる声を、聞き逃すはずもなかった。
廊下の曲がり角に差し掛かったころ。
その角の向こう側からだった。
渡「じゃ、カラオケで時間潰すか」
聞こえた瞬間、なべしょだ！ってことしか頭になくて。だからそのセリフが、一緒にいるらしい誰かにかけられたものだってことにすら、気づくほどの余裕はなかった。
「なべ、」
「えー！いいよぉ、このままウチ行こ？」
曲がった先の、さらに数歩先。
見慣れたなべしょの後ろ姿と、その隣の、小柄で華奢な、女の子。
あたしは、"なべしょ"というたった数文字すら言い切ることはできなかった。
それでも、なべしょは振り返る。
ハッとした顔をして。
たぶんそれは、あたしだって気づいてくれたから。
振り返ったなべしょにつられて、隣の女の子も振り返る。
「知り合い？」
女の子はなべしょとあたしを交互に見て。
意識を引きつけるみたいに、ゆっくり、緩やかに、
なべしょと腕を絡ませた。
その瞬間、胸に濁ったものが生まれる。
なにそれ。
なにそれ、なんか、嫌だ。
なべしょ、言って。
俺の同居人だって、言ってやって。
渡「…………いや、知らない人」
「そう？じゃ、行こ」
言葉は出なかった。
なべしょの背中が、果てしなく遠い。
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しょぴお - このお話すごく好きでした。今まで更新お疲れ様です。ずっと読んでました。笑 お話の終わり方がすごい、いい感じですね。このお話大好きです。 (2019年5月31日 19時) (
レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 続編待ってます。 (2019年5月30日 11時) (レス) id: f9aa5203aa (このIDを非表示/違反報告)
Momanao(プロフ) - 続編、楽しみにしてます！なんか...嵐が吹き荒れる予感が... (2019年5月16日 1時) (レス) id: a8ed6fc393 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴお - 話を読んでて泣きそうになった…。いや、泣く笑 (2019年5月14日 22時) (レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
ミックスジュース(プロフ) - なべしょに頑張って欲しい！この作品大好きです！！これからも頑張って下さい！楽しみしています(^○^) (2019年5月14日 20時) (レス) id: 6b8cfc92fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2019年2月1日 14時
