夏カゼ:W ページ26
「……からだ痛いよぉ」
渡「寝ちゃえば気になんねぇよ」
「…風邪ひいたら、こんなに、弱くなっちゃうもんだっけ…」
苦しそうに顔を歪めて、俺を見上げるA。
それが痛ましくて、いじらしくて、何もできないのが悔しかった。
こんなになんでもしてやりたいのに、こればっかりは俺にはどうにもできない。
渡「……そうだよ。お前は強いよ。だから今日は思いっきり弱る日にしな」
何かできることはないか、こいつを安心させるには何をしてやったらいいんだ。そう思いながら言う。
Aは泣きそうな顔で俺を見て、何か言いたそうにする。なんだろう。何を伝えたいんだろう。
"ほんとに？あたしのこと好きになっちゃわない？"ってとこかな？
それはお前、自信過剰すぎだぞ。
俺のこと誰だと思ってんの？
俺はお前の、友達じゃん。
渡「弱いとこ俺が受け止めるって言ったのに、お前、毎日強いんだもん。俺あんま気きかないから、Aから頼ってくんないと、支えられない」
俺の言葉を聞いて、少しだけ驚いたように目をぱちくりさせて。
一度目を伏せてから少し考えて、そしてまた俺を見た。
「……て、」
渡「ん？」
躊躇いがちに、布団の下から、手をのぞかせる。
「……手、つなぎたい」
渡「っ、」
俺は今ちゃんと、なんてことない顔、できてるかな。
渡「……いいよ」
布団から差し出された手を優しく握り込んで、布団の中に押し返す。
これは、Aからの信頼の証だ。
俺の勝手な感情で、裏切るわけにはいかないんだ。
「なべしょいると安心する」
渡「……そう。そりゃよかった」
開いている方の手で、布団をAの首元までずり上げる。
渡「寝るまで繋いでるから」
俺の言葉に、嬉しそうに目尻にシワを寄せて笑って。言葉はなく、小さく頷いた。
そっと目を閉じて眠ろうとするAを見て。
あぁ。
本当だったら、お前に聞きたいことがたくさんあるよ。
俺は今、Aのなに？
俺のこと、"翔太"って呼んでくれる日はいつかくる？
友達としてじゃなく、この手を握りたいって言ったら、お前は困ってしまうよね？
自分の言ったことを、正しいと思っているけど、後悔してる。
こんな気持ちになりたくなかったよ。こんなはずじゃなかった。
俺はお前を、裏切りたい。
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すずの(プロフ) - しょっぴーしんどみが深いです！ (2019年5月5日 2時) (
レス) id: 0281d1cc7e (このIDを非表示/違反報告)
もやし(プロフ) - 改めて最初から読み直しました！！しょっぴーが切ない…。しょっぴー頑張れ！！笑 (2019年1月25日 1時) (レス) id: e09021bb44 (このIDを非表示/違反報告)
とみちゃん(プロフ) - あなたの紡ぐ文章が読めて嬉しいです、応援してます。 (2019年1月25日 1時) (レス) id: df9c0b9860 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - 最近は更新が毎日あって寝る前の楽しみになっています！無理せず頑張ってください！本当に文章やストーリーがお上手で感動します（；＿；） (2019年1月24日 1時) (レス) id: 32bd2067cf (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこけし(プロフ) - 阿部担だけど、なべがものすごく気になってしまいます…(笑) 物語もいよいよ佳境ですが、メンバー目線もっと読みたいです♪ 更新無理せず頑張って下さい(*´∀｀*) (2019年1月23日 17時) (携帯から) (レス) id: b63c0386f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2018年12月18日 4時
