役割 ページ28
「Aさんの看病は俺の仕事だと思ってた」
バイトが終わって、帰り支度をしている時のことだった。
今日はシフトがないはずの木村くんが、いつの間にか宿舎から事務所へ来ていて、いじけた顔でそんなことを口にした。
「いたの、木村くん」
「Aさん、例のシェアハウスにそんなに心許してるの？惚れられたら困るんじゃないの？看病させるなんて、俺じゃなかったらコロッといっちゃうんじゃない？」
あたしの言葉なんて聞いてない、とでも言うかのように、矢継ぎ早に畳み掛けてくる。突かれると痛いところであることは、このあたしが一番よくわかっていて。
だから、おちゃらけて誤魔化すことにしたんだ。
「木村くん〜、あたしのこと買いかぶりすぎじゃない？それすんごい褒めてるよ」
だけど賢くて鋭い木村くんは、あたしの逃げを、見逃してはくれなかった。
「1つでも恋愛感情が形になったら、あのシェアハウスが壊れちゃうって言ってたの、もう忘れたの？」
「……そ、れは」
「覚えてるでしょ？そしたら隙なんて見せたらまずいんじゃない？それとももしかして、Aさんのほうが誰かのこと好きになっ…」
「違う！ 違うってば……そんなの違う。木村くんてば勘ぐりすぎ。誰もあたしのことなんて好きになってないし、あたしだって誰のことも好きになってなんかない」
木村くんにこれ以上詰めてこないでほしくて、思わずその言葉を遮った。
木村くんの疑う表情は変わらない。
「俺、一番近くで、Aさんの弱いとこもズルイとこも見て来たからわかるよ」
木村くんはちょっとねじれた人だけど、本当はすごく優しくていいヤツで、だからこそそんな君に依存してた。
「もう俺必要なくなったんでしょ。俺の代わりになれるやつが、Aさんと一緒に暮らしてるんだね……いや、もしかしたら、代わり以上なのかな？」
木村くんは、まるで何にも感じてないみたいな表情で。
あたしに感情を読み取らせてくれない。
「シェアハウスの平和な関係が壊れようと、俺にはなんの関係もないからどうでもいいんだけどさ、俺を捨てるからには覚悟くらい決めなくちゃダメじゃない？」
ニヤッと、いたずらっ子みたいに笑って、背を向けた。
「木村く…」
「あ、あと最近この辺不審者出てるみたいだから、帰り気をつけてね」
まるであたしに言葉を紡がせないためかのように、食い気味にそう被せてきて。
あたし達の間を鉄製の扉が隔てた。
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すずの(プロフ) - しょっぴーしんどみが深いです！ (2019年5月5日 2時) (
レス) id: 0281d1cc7e (このIDを非表示/違反報告)
もやし(プロフ) - 改めて最初から読み直しました！！しょっぴーが切ない…。しょっぴー頑張れ！！笑 (2019年1月25日 1時) (レス) id: e09021bb44 (このIDを非表示/違反報告)
とみちゃん(プロフ) - あなたの紡ぐ文章が読めて嬉しいです、応援してます。 (2019年1月25日 1時) (レス) id: df9c0b9860 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - 最近は更新が毎日あって寝る前の楽しみになっています！無理せず頑張ってください！本当に文章やストーリーがお上手で感動します（；＿；） (2019年1月24日 1時) (レス) id: 32bd2067cf (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこけし(プロフ) - 阿部担だけど、なべがものすごく気になってしまいます…(笑) 物語もいよいよ佳境ですが、メンバー目線もっと読みたいです♪ 更新無理せず頑張って下さい(*´∀｀*) (2019年1月23日 17時) (携帯から) (レス) id: b63c0386f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2018年12月18日 4時
