第48話 夢の続き ページ49
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「A」
『神威さん? 』
名前を呼ばれて振り返れば、神威さんがすぐ後ろにいた。私よりも頭ひとつ背が高い彼を見上げる形になる。
右腕が伸びてくる。それは私の耳元を確かめるように触り、滑り落ちて頬を撫でる。くすぐったくて、肩がはねた。
いつもと違う様子に戸惑い、神威さんともう一度名前を呼ぶが、応えてはくれない。
「……いいだろ? これくらい」
神威さんが目を細めて呟き、距離が近づく。顎を持ち上げられ、上を向く形になった。
胸を押してみるがびくともしない。
視界が神威さんしかみえなくなる。これ以上、近づいたら……
『だめ‼ 』
指先に何かが触れて、それが床に落ちる。ガラスの音と一緒に目を覚ました。周りを見渡せば、さくら屋の休憩室だった。座っている足元には寝落ちする前に飲んだ水のコップが。もう粉々だったけど。
『なんて夢を……』
「あらあら、寝ぼけてたの? 怪我してない? 」
頭を抱えれば、たまたま入ってきた女将さんが苦笑していた。
―――…
「やぁ、待ちくたびれたよ」
仕事を終え、いつも通り裏口から外に出た時だ。暗闇から音もなしに現れたのは、つい先ほど私の夢に出演した人物。つい動揺してしまう。
『こんばんは……』
彼はたまにこうして、迎えに来てくれる。監視を超えて、これじゃ護衛だ。でも私をアパートまで見届けるとすぐに暗闇に消えしまう。
あんな夢を見た事に深い意味はない。
知り合いの夢をみるのはよくあるよね、と自分を落ち着かせて、神威さんの横を歩く。
「ねぇ」
前を見たまま神威さんが私を呼ぶ。そのまま左手で私の右腕を掴んだ。驚いた私は足を止めて、神威さんを見つめる。
「これどうしたの? 」
『え、ああ、これはあの、』
お、落ち着こう……
『コップで切ったんです。わ、割った時に』
へぇー、と言いながら絆創膏で包まれた人差し指を見つめる。暗闇だから手元をよく見ようとしてる神威さんとの距離が縮まる。
あれ、これって夢みたいな展開……
『し、心配はいりません! 深くないですから』
と少し大きい声を出して、彼の腕からパッと逃れる。神威さんの夢を見たからコップを割ったなんて言えない。
「……鈍臭いね」
不満そうな顔をして神威さんは自分の左手を見つめてる。今は神威さんの一つ一つの仕草が、夢と連動してしまって困る。
その日は早足でアパートに帰った。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時