第40話 苦手なモノ ページ41
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閉じそうになる瞼を必死に開く。先ほどまで自分が寝ていた布団を持ち上げ、ベランダに出れば、暖かい太陽が顔を出していた。
洗濯物は部屋の中に干すと決めたが、流石に布団は日光に当てたい。手すりに布団をバサリとかけて、大きめの洗濯バサミで固定すれば完成。今日は気持ちよく寝れそう。
今日はひのやはお休みだから、夕方まで久しぶりに部屋の掃除でもしようかな、と心の中で今日の予定を決め、部屋の中に入ろうとしたその時だ。
『っ‼ 』
視界に入った、生き物に声も出せない。ついベランダの手すりに助けを乞うように寄りかかるが、逃げ場がない。完全に目が冴えてしまった。
お願いだから、跳んだりしないで…!
ここ最近雨が多かったせいか、その生き物…カエルが姿をみせる。何も危害を加えられてないが、ごめんなさい、大の苦手なんです。
窓に張り付いている。どうしよう、そこからしか部屋に入れないのに。わずかにヒョコと小さく跳ぶ。
たったそれだけの事だけど、動き出したことに戸惑ってさらに布団に寄りかかれば、ずるりと背後でイヤな音。
『あ! 』
洗濯バサミの掴みが甘かったのか、ぶら下げる面積を間違えたのか。パチンと音を立ててお気に入りの布団が重力に逆らうことなく、ベランダの向こう側へ。
落ちていくものを掴みたくなるのが人の心理なのか。反射で私もベランダから身を乗り出し、手を伸ばす。が、乗り出しすぎたせいで、自分の体も手すりから半分以上はみ出る。その瞬間ふわりと浮遊感。
心臓がギュッとつかまれた感覚に目をつぶれば、
「な、にしてるの」
耳元で聞き覚えのある声がする。腰に回された腕は軽々しく私の体を自らの方へ引き寄せるが、勢いがつきすぎて、2人で尻もちをついてしまった。
『神威さん……』
助けてくれた人物の名を呼ぶ。おかげで私の身は無事に保護された。
いつまでも彼に寄りかかっていることに気づき、急いで立ち上がり、状況が整理できず、1人であたふた。
『す、すみません! あ、いや、おはようございます?
えっと、ありがとうございます……』
「落ち着いてよ。怪我は? 」
もちろんないです。
深々とおじぎすれば、神威さんは立ち上がり、
「ならいい」
と呟き、おもむろに手すりから顔を出した。
「残念。アンタを助けるのに夢中になってたら、布団掴み損ねたよ」
私も同じように視線を向ければ、見覚えのある布団が悲しげに地面に落ちていた。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時