第26話 レース ページ27
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「アンタは1人で出歩かない方がいい」
私を家まで届ける事が使命だったようで、
注意をされれば、帰ると言わんばかりに手すりに立ち上がる。
視界に彼の腕が入り込み、大事なことを思い出した。
『す、少し待ってて下さい! 』
部屋に慌てて入り、目的のものを手にして、
またベランダに出る。
差し出した包帯をみれば、キョトンとした顔になり、
なぜこれを自分にあげようとしてるのか、分からないみたい。
『この前の、血だらけにしちゃったので……』
「わざわざ買ったの? 」
意外にもすんなり、受け取ってくれない。
もしかして、あれは特別な包帯だったのかな?
街の薬屋で買った包帯なんて使いたくないのかも……
自分中心に考えてしまった事を後悔すれば、
そんな気持ちを汲み取るように包帯を受け取ってくれた。
「もう会わないかもしれない奴の為に買うなんて、
Aは律儀だね」
懐に包帯が滑り込むのを見届ければ、
自分の行いを肯定された気がして安堵する。
今度こそ、本当に帰るらしい。
「鍵、かけ忘れるなよ。
あと、通りに面してないからって安心してると
レース盗まれるよ」
レース? 言葉の意味を処理していれば、
またも待ってる暇はないらしく、
羽根がついてるみたいに軽やかに落ちていく。
心配をよそに彼は器用に建物を飛び越えて、夜の街へ消えた。
『名前、また聞きそびれちゃった……』
視界の端で白いものが風で揺れる。
気になって見てみれば、彼の言葉の意味を理解した。
『み、みられた……! 』
もう絶対、洗濯物はベランダに干さないと固く誓った。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時