9.貧血(さとみ) ページ25
今日は土曜日。
忙しかった仕事も一通り落ち着き、久しぶりに何の心労もなく過ごせる休日だ。
さとみくんも今日は特に予定が入っていないらしく、昨日から一緒に買い物に行く約束をしていた。
しかし、何となく朝起きたときから体が重い気がするのだ。でも最近仕事が忙しかったからただ疲れているだけだとこのときはあまり気にしなかった。
(せっかくのお出掛けだし)
心倣しか少し青白い顔を隠すために、いつもよりちょっとだけ濃いめにチークを入れる。
「A〜?準備出来た?」
『終わったよー。よし、行こ!』
丁度お化粧が終わったところでさとみくんに呼ばれ、すぐに家を出た。
今日はまず、洋服を見に行ったあと、近くに出来た喫茶店でお昼ご飯を食べようと事前に話をしていたので、まずは洋服のお店に向かって並んで歩く。
(…あれ?さとみくんて歩くのこんな速かったっけ…?)
さとみくんは自分からは決して口には出さないけれど、いつも紳士的で、何も言わずに歩く速度も私に合わせてくれるのだが、今日は普段より速く感じる。
(ちょっと待って)
彼に追い付こうとはや歩きになりながらそう声を掛けようとしたとき、急に目眩がして前に倒れ込みそうになった。
「え、おい大丈夫か?!……A顔真っ青だぞ」
幸い倒れる前にさとみくんがこちらに気づき体を支えてくれたが、立ち直そうとしても足に上手く力が入らない。
とりあえず、支えられながら近くのベンチに座らせられる。
近くの自販機でさとみくんが買ってきてくれた水を飲んで一息ついた。
「……よし!ごめんね、もう大丈夫!」
『でもお前まだ顔色すげー悪いし、今日は帰ろう』
「え、大丈夫だよ?せっかく一緒に出掛けれたのに…」
『いやでもさぁ…』
帰りたくないと駄々をこねる私を見ながら悩んでいたさとみくんだったが、何か思い付いたようである提案をしてきた。
「じゃあ、このままここでちょっと休め。で、落ち着いたら行こ」
『…!わかった!』
「んじゃ、はい」
そう言ってさとみくんが自身の膝をポンポンと叩く。
『え?』
「休めって言ってんだよ」
『休んでるよ?』
「めんどくせぇなぁ!寝ろっつってんの」
『え、いやいや無理だよ外だよ?』
「嫌なら帰る?」
『………………帰らない』
さとみくんの膝で寝るか、帰るか。
逆の意味で究極な選択を迫られ、渋々さとみくんの膝にそっと頭をのせベンチに横たわった。
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つばさ - とても楽しかったです (7月5日 6時) (レス) @page47 id: dd93105dfa (このIDを非表示/違反報告)
あや - 久々に観に来ました!何回見ても飽きないです!ここまでお疲れ様でした! (2022年8月15日 13時) (レス) id: 7e40220ef6 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - 野菜さん» 申し訳ありません…。現在リクエストは締め切ってしまっていまして、この話は「骨折」で終了する予定なんです…。ですが、続編を作る予定ですので、少し先になってしまうかもしれませんがそちらで書かせて頂きたいと思います!リクエストありがとうございます…! (2020年1月12日 2時) (レス) id: c18b45fe4f (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - さきさん» わ〜凄くわかります!!あの眠くなっちゃう現象は何でしょうね…?やっぱり安心する声だからでしょうか…! (2020年1月12日 2時) (レス) id: c18b45fe4f (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - 海月さん» 温かいコメントありがとうございます…!少しずつですがこれからも頑張りますので読んでいただけたら嬉しいです。 (2020年1月12日 2時) (レス) id: c18b45fe4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2019年9月20日 0時