怖いんだってば【東海オンエア】

偉大なりょうくん ページ35

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「あ、もしもしとしみつ 今家に居る？」

りょうくんが戸惑う私を見てにやにやしながら 電話をスピーカーして 私に見せた。りょうくんの携帯の画面には 通話中の文字、そして「としみつ」と表示されている。

『なにして、』

なにしてるの！と言い終わる前に りょうはニヤニヤした顔のまま、スピーカのままテーブルに置かれた携帯を指さして笑った。きっと「声聞こえるよ」と私に有無をいわせないようにしている、彼は悪い人だ

「あ、ほんと じゃあ届け物したいんだけどいい？」
【「届け物？」】
「そう、家で待ってて」
【「あー、了解しましたー、うい〜」】

届け物？りょうくんは今からとしみつの家にものを届けに行くのか？ 疑問に思いながらお酒を口に付けた。

...え？届け物って私の事？
「今家にいるって」そう言って グラスに口を付けたりょう。私が今からとしみつの家に行くってこと？凸るってこと？ 混乱する私を見てりょうは呑気に笑った。

「そんな、焦らんくても」
『、怒られたら嫌だし』
「怒らんよ 届け物には間違えないし」
『そうかな』

誤解は解きたいと思う、だけどどうしてとしみつの事でこんなに感情がコロコロ変わって小さな事に一喜一憂してしまうのか。 今までもこんなことはきっと無かった

りょうは グラスを飲み干すと、さてとシャツを羽織って会計をする準備をした。割り勘にしようと提案する私を一瞬見た後 無視して奢ってくれた、たまには私にも払わせてよ！とりょうの背中を叩くと 「また今度ね」と喚く私を宥めた。りょうの「また今度ね」を私は人性で何回聞いただろうか、数え切れない。

「送ろっか、あ〜飲んじゃったんだった」
『ここから近いから歩きます』
「いや、危ないよ暗いし」
『ううん 大丈夫 じゃあね！本当ありがとう！』

心配そうに眉をひそめるりょう。これ以上いたちごっこを続けるのも先が見えないと思い、小さくお辞儀をしたあとりょうの返事を待たずに 走り出した。

背中から、「あぁ、もう」と声が聞こえる。気をつけてよほんとに！と大きな声が聞こえて 振り返って手を振った。りょうは本当にいい人だ。

高校時代 陸上部の数少ないマネージャーだった私は例の如く仕事覚えが悪くてよく先輩にしっかりしろとお叱りを受けていた。そんな姿を見てりょうだけは部活終わりの放課後、残って仕事をする私の隣で何をする訳でもなくずっと座っていてくれた。

そんな思い出に浸っていると ポツリと私の頭を濡らす雨が降ってきた。

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