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A視点
「か、影山?」
『樋口くん……?』
私たちの前から歩いてきた人物は、転校生の樋口黎だった。
私たちは足を止め目を丸くして、お互いの名前を呼んだ。
「おっ知り合いなのか?」
霊幻さんが屈んで私の顔を覗き込んで、呑気な声をあげる。
まずい、霊幻さんと樋口くんは微妙な関係で……。
すると、焦燥に駆られている私の名前を再び呼ぶ声がした。
「影山…。」
今度は怒りと軽蔑を含んだような声だった。
顔を上げてみると、樋口くんは霊幻さんの顔を苦々しい顔で睨んでいる。
「え?お、俺?」
霊幻さんは初めて会った男の子にものすごい目を向けられて、私の方をチラチラ見ながら困惑している。
すると霊幻さんは右手を口の横で立たせて、私に焦ったような声でささやく。
「A!この彼、誰だよ。」
私は口の端をぎこちなく持ち上げて、苦笑いをした。
『た、ただの同級生です……。』
私のその答えに霊幻さんは眉をひそめて、それから「なるほど」というように顔を上げた。
そして霊幻さんは樋口くんの目の前に立って、なだめるように大人の顔をして言った。
「おいおい、勘違いしてるみたいだが、俺たちは君が思ってるような関係じゃないぞ。」
「……は?」
「俺の知り合いの姉ちゃんなんだ。」
ん?霊幻さん、勘違いってなに?
私は霊幻さんの言葉に違和感を覚え、眉をひそめた。
『霊幻さん、なんか言ってること的外れじゃない?』
すると霊幻さんは「えっ」という声を上げて、私にコソコソッと顔を近づけた。
「こいつAの彼氏だろ?浮気してると勘違いしてんだろ?」
「『はあぁぁ!?』」
霊幻さんの言葉は樋口くんにも聞こえていたらしく、私たちの声は見事揃った。
樋口くんが叫ぶようにして霊幻さんを睨みつける。
「さっきからあんた何言ってんだよ。昼会ったときは影山と付き合ってるっつってたくせによぉ!」
霊幻さんは何が何だか分からないという顔で、視線を樋口くんと私の顔を何度も行ったり来たりしている。
そりゃそうだ。霊幻さんにとっては樋口くんと初めて会ったし、私と付き合ってるなんて言った記憶あるはずないんだから。
だけどどちらからしても正しいことを言っているため、私は片方だけを弁護することが出来ない。
なので私は、巻き込んでしまった二人に心の中で謝罪しながらも、ずぅっと黙っていた。これが1番の方法だ。

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かっち(プロフ) - 夏さん» 具体的に言ってくれるの、めちゃくちゃ嬉しいです……!!モブくん、良いですよね…!テルくんとの関わりをきっかけにどんどん複雑になっていく所もあるので、これからも頑張りたいと思います!コメントありがとうございました。 (2023年3月5日 22時) (レス) id: 1b6cbbdaba (このIDを非表示/違反報告)
夏 - 色んなキャラとの関わりがあって凄く面白いです!!今まで姉設定の作品を読んでなかったんですけど、「これめっちゃ良い、え好きです」ってなりました。推しはモブくんなんですけど、テルくんとの関わりががなんかすっっごく好きです。これからも頑張ってください!! (2023年3月5日 21時) (レス) @page50 id: e81bb630ed (このIDを非表示/違反報告)
かっち(プロフ) - ルーさん» 最高の言葉ありがとうございます!見つけた時って……いやもう見つけてくれただけでこっちが嬉しすぎます(?) ルーさんが褒めてくださったので、やる気が出てきました!続き書いてきます!!コメントありがとうございましたぁぁぁーーー (2023年2月27日 22時) (レス) id: 1b6cbbdaba (このIDを非表示/違反報告)
ルー - 面白くて一気読みしました!こういう小説を探してたので、見つけた時めちゃくちゃ嬉しかったです!次の更新を楽しみにお待ちしております(*^^*) (2023年2月27日 21時) (レス) @page45 id: 3840c69267 (このIDを非表示/違反報告)
かっち(プロフ) - ゆさん» めっっちゃ嬉しいです…!!更新忘れたり迷惑かけることもあると思いますが、どうか最後まで見届けてくれると嬉しいです。コメントありがとうございます!! (2023年1月25日 19時) (レス) id: 1b6cbbdaba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かっち | 作成日時:2022年12月8日 15時