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終章 ページ35

夏が帰ってこなくなって、かなりの歳月が流れた。

乱歩は相変わらず「名探偵」として事件を解決し、頭の片隅で夏の事を思っていた。
平凡な日常が、つまらなく流れていったある日の事。
探偵社に、新人の事務員がやって来た。

「入りたまえ」
太宰治の声に、事務所のドアが開かれる。
まだ幼さが残る顔立ちをした少女が、そっと顔をのぞかせた。
不思議だった。
その少女には、見覚えがあった。

「…………あたし、川崎夏実です。よろしくお願いします」
「と云う訳だから。幼いけれど誰よりも事務の仕事に向いてるよ。仲良くしてあげてね」
夏実は困ったように視線を泳がせ、やがて乱歩を見る。その瞬間、円らな瞳が見開かれた。
「らん、ぽ…………さん」

「夏実ちゃん、乱歩さんの事知ってるの?」
太宰の問いかけに、夏実は困ったように笑う。その顔はやはりー

あの幽霊の少女にそっくりだった。

「久しぶりですね」
夏実は乱歩を見つめたまま云う。
「世界一の名探偵は、やっぱり“視える”んですね」
夏実の目が悪戯っぽく輝く。
彼女の首元に鈴があるのを見て、何か云いかけるとー。

「あたしと乱歩さんだけの秘密です」

人差し指を唇につけて、歯を見せて笑う。
乱歩も顔がほころんで、夏実に駆け寄った。
ぎゅっと抱きしめる。
夏実の耳元で、囁いた。

「お帰り、夏」

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茉里 - ありがとうございます!続編もじゃんじゃん更新しますので……よろしくお願いします! (2019年6月4日 19時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
ク レハ(プロフ) - 完結おめでとうございます!続編のほうも応援させていただきます!! (2019年6月4日 18時) (レス) id: ddd19fa939 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - ええ!勿論です! (2019年6月3日 18時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - 最後まで読んでくださってありがとうございました!新作書いたらまたよろしくお願いします! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茉里 | 作成日時:2019年5月27日 21時

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