十二章 ページ12
「馬鹿だな阿呆だな愉快だな！君、今生前の記憶がないって云ったかい？」
なぜか笑い転げる乱歩さんに、こくりと頷く。
そう。昨日、家族の事を思い出そうと奮闘したのだけれど、全く思い出せなかったのだ。
どこで生きていたのかも、自分が今何歳なのかも判らなくなり………今まで浮遊霊としてあっちこっちをウロウロしてたのは、もしかして無意識に生前の記憶を探してたのかなぁ何て思ったりして。
「それで、僕に思い出す協力をして欲しい……って？」
乱歩さんは心底おかしそうに口元を手で覆う。
………そんなに笑われるような事云ったかな？
「まあ、面白そうだし、やってあげてもいい」
立ち上がり、ラムネを手に戻ってきた乱歩さんは、私を見つめながら云った。
「生前の記憶、ねぇ……まず、思い出せる細かな記憶について教えてよ。真逆皆無って事はないだろう？」
そう云われて、私はゆっくり目を閉じる。
思い出せるのは、読んだ本の内容くらいだ。
この前事件によって殺されてしまった作家さんの書いた、小説の一文。
それだけは、どうしても忘れられない。
『人は生きている時にこそ見落とす物がある。死んでからそれに気づく』
今ならその意味が判る。
人が生きている時に見落とす物ーそれは当たり前だと思う事が全て“幸せ”だと云う事だ。
死んでから判った。地面を踏んで歩ける事も、誰かに見てもらえる事も、全部“幸せ”。
私はもうーしてもらえない事だ。
「乱歩さん。少し時間をください」
この小説を、もう一度読みたくなった。
一人で街に行くなんて、随分久しぶりだった。
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茉里 - ありがとうございます！続編もじゃんじゃん更新しますので……よろしくお願いします！ (2019年6月4日 19時) (
レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
ク レハ(プロフ) - 完結おめでとうございます！続編のほうも応援させていただきます！！ (2019年6月4日 18時) (レス) id: ddd19fa939 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - ええ！勿論です！ (2019年6月3日 18時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - 最後まで読んでくださってありがとうございました！新作書いたらまたよろしくお願いします！ (2019年6月3日 17時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 完結おめでとうございます！ (2019年6月3日 17時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉里 | 作成日時：2019年5月27日 21時
