元カレしか勝たん！ (ページ8)

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『めちゃくちゃ好きだった。だけどアイドルになりたいって夢ができたから、別れるしかなかったんだよ……』

瑞稀の声は少しだけ震えていた。

そしてなぜか、わたしのずっと空いていた穴が少し塞がったような気もする。

『俺だって死ぬほど辛かった。もうAに会えないのかなとか話せないのかなとか思うだけで苦しくて仕方がなかった……』

「じゃあアイドルになんか……」

『それは諦められなかったんだよ……どうしても叶えたい夢だったから』

そっか……

瑞稀には夢中になれるものができたんだね。

わたしがいなくたって生きていけるんだ。

「もうわたしとは付き合えないの……？」

『うん、ごめん……』

わたしは今だってまだ少し瑞稀のことが好きなのかもしれない。

誰にも取られたくない。

ずっとわたしのものでいてほしい……って思ってしまうんだ。

「わたしは瑞稀のことが好きだよ……」

『ありがと。でも俺はもう好きになれないから』

「瑞稀はファンの子が1番なんだね」

『じゃあおまえも俺のファンになれば？』

「は、」

意味わかんない。

絶対そんなの嫌だから……

「わたしはファンの子と同じにされたくない！瑞稀の中の1番になりたいの！」

『何言ってんの？そんなの無理に決まってんじゃん』

「無理じゃない！わたしたち一度は付き合ってたんだから！」

なんでわたしじゃダメなの？

わたしは瑞稀の"ファン"じゃなくて"元カノ"なのに……

『またライブ来れば？そしたら会えるじゃん』

「調子乗んな！わたしは瑞稀のことをアイドルとして認識してないからね！？」

『あっそ。勝手にしろ』

ずっとここにいたくないし、もう帰ろうと立ち上がるといきなり腕を掴まれた。

『俺たちのこと絶対誰にも言うなよ』

「言うわけないし」

そう言って腕を振り払って家を出た。

絶対ファンになんかならないんだから。

だって瑞稀はわたしの"元カレ"なんだもん。