ふたりの愛情論(仮)【赤井秀一】 (ページ6)

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警視庁の廊下。ページ6

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しかしその決まりかけたタイミングで、水を指すような一言を放ったのが服部である。

「私は新堂も捨てがたいですが」

同じく降谷の部下。新堂Aの名前をあげた。

この瞬間、会議室の空気が一瞬凍りついたとかついてないだとか。あくまで噂である。
ヒソヒソと陰口にしては小さく、独り言にしては大きな声が聞こえる。

「新堂といえば、たしか女性の…」
「潜入捜査では降谷くんに大きく貢献したって言う…」

愛想笑いを各々浮かべたのち、会話は終結。多数決で決められる内容じゃない。会議に参加する者の中で、服部は圧倒的に地位も年齢も若いが、敵に回したくない相手だと熟知されているからだ。

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会議を重ねても堂々巡り。後継人の話が出たのは組織が壊滅して数週間後の話であったが、気付けば月日は過ぎていた。
そしてついに、その話は会議に参加する権利を持ち合わせていなかった降谷にまで回ってきたのだが。

「僕の口からどちらかの名前を出すのは、余りに烏滸がましいです。皆様の議論の末の結論が、懸命でしょう」

部下のふたりならば分かる。あの男、面倒くさがったな。心の声が聞こえてくる。

(次期候補なんぞどうでもいい、無駄な会議に表情筋使う暇があれば、書類のひとつにでも目を通し老眼極めながら、判子でもつきやがれ。誰がこの椅子に座るかでうんヶ月という月日をかけるなこのヤロー。)

そんな声だ。真実、降谷は深く考えていなかった。降谷にとっちゃたかが椅子、地位などそんなもんだった。

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