彼女だけが知らない事実 ページ19
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『相変わらずの腐った集団でほんとに困ったよ』
新堂がサイバー課から公安に移動になったとき。すべてが円満だったわけではない。
言わば、新堂は情報操作のスペシャリストで、エース格でもあった。そんな人物を引き抜きでもされたら、やっていけるものもやっていけない。
それを言葉巧みに服部や降谷がかわした訳だが。今でも仕返しのように欲しい情報が迅速に回されないのも確かなことで、その度に新堂が出向くのが当たり前になっていた。
降谷はそろそろ一泡ふかせてやるか、と真顔でぬかし、
服部は面倒な小蠅が飛び回ってるねぇ、と目尻に皺をよせ呟いていた。
どちらにせよ、ふたりは絶対に敵に回すべきではないと実感した。
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『でもね、本当にいい感じの人いたら紹介してよ。志保ちゃんはこーんな小さいときから見てたから、悪い男にひっかからないか心配だよ』
玄関へと続く廊下を歩きながら、新堂は手でサイズを表しながら冗談半分に告げる。
「貴方は結局は18歳の私しか知らないでしょう」
クスクスと笑みを混じらせる。
「それに、私はお姉ちゃんより男の趣味はいいから」
その言葉に、新堂は扉に手をかけ今にも出ようとしていたが、振り返って一瞬考えたのち、口を開いた。
『明美ちゃんだっけ？』
「ええ」
『なんか、凄くロマンチックな名前の人と付き合ってたよね』
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「諸星大」
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あーそれだ、と新堂は頷く。
宮野明美にも、その諸星大とやらにも会ったこともなければ、顔も見たこともないが、志保からはよく話を聞いていて。まるで知り合いのように話してしまっている。
『じゃ、また来るね』
「とうぶん結構よ」
『んもー、志保ちゃん冷たい。絶対１ヶ月以内に来るからね！』
ただでさえ公安警察は忙しいだろう、と言うよりも先に新堂は扉を開いて足を踏み出していた。その後ろ顔は、すでに仕事のことを考えているようで、相変わらずの社畜っぷりに思わず笑ってしまう。
「諸星大。あなたも会ったことがある人だけどね」
志保はニヒルに笑った。その言葉は、扉がしまる音に掻き消されてしまったが。
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作者名：ハル | 作成日時：2021年9月16日 19時
