元・灰原哀 ページ17
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上層部の
今までどれだけ私が瓦礫の下に埋もれそうになって、パンプスを血で汚したと思ってんだか。
昇進の条件にスマートさがあるんなら、あんた等のベルトに乗りきった贅肉を捌いてからにしろって感じよ。
私のことがだぁいすきな後輩君には、朝から晩まで熱烈なラブコール。
耳にタコどころじゃ足りない。最近じゃ夢にも出てきやがる。
左からは、あの日本語ペラペラの外人たちが出世の素晴らしさと己に降りかかる犠牲の数々を雄弁にプレゼンしてくださる。
あれ、半分面白がってるからね。私、知ってるんだから。
アメリカンジョークだなんだって言ってたけど、ぜんっぜんジョークにも誤魔化しにもなってないから。
右からはあのお堅い奴が眼鏡押し上げながら、‥‥ああ止めた。これ、言い始めたら止まんないわ。
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「もうかなり喋ったけどね」
呆れ眼の志保に、新堂は肩をすくめた。
「良いじゃない、あなたが上に立てば。その同僚の眼鏡さんも、それを望んでるんでしょう」
あっさりと口にする志保は、もう飽きてしまったのか、ソファの背もたれに背中を預け、欠伸をしてしまった。
新堂は何とも言えぬ表情で、視線をずらす。
『甘えてるだけかもしれないけどさ、今が一番居心地いいんだよねぇ』
分かっている。周りからの意見を口実にしているが、結局は自分が決めきれないだけ。誰かの上に立ち、指揮する立場となり、降谷のようにできなかったら。常に死と背中合わせである公安警察にも大切な家族がいる。小さなミスが未来を変える、その恐怖だけが小さな体に背負いかかる。
きっと彼女は、今までのように何ともない顔して、そつなくこなしてしまうだろう。
そして知る。降谷零と言う男の恐ろしさを。
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作者名：ハル | 作成日時：2021年9月16日 19時
