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「遅いよー」
賑やかな居酒屋。涼しい顔して戻ってきた同期 元宮Aに、伸ばしていた箸を止めた萩原研二は悪態をついた。
『ごめん。伊達もう来てたんだ』
「元宮とほぼ入れ替わりで来た」
萩原の横に腰掛けたAは、先程までふたりで開かれていた飲み会に、同じく同期の伊達航が訪れたことに少し驚いた様子だった。
当初は、来る予定ではなかったのだろう。
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「ねえ、煙草吸ってきたでしょ？」
『ああ、うん』
「せっかくこんなナイスガイと二人きりの飲み会だったっていうのに、何なのその仕打ちは」
『私にはナイスガイなんて見えないし、今はふたりじゃないし』
負けず劣らず言い返した女に、伊達はがははっと笑った。
「ほんとお前ら相変わらずだな。でも、元宮も煙草吸うようになってたとはな」
『肺癌万々歳』
「ほんと、うちに飛ばされた歩く受動喫煙もどうにかしてくれよ」
溜め息をついた伊達の言葉に、女の眉がピクリと動く。
「あっは、陣平ちゃんのこと？元気にやってる？」
「問題製造機だよアイツは。今日も誘ったけどな、あの様子じゃ来れそうにねえな」
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萩原研二、松田陣平、元宮Aの3人はほんの半年前まで、同じ爆発物処理班にいた。
しかし、問題行動数多の松田は、頭を冷やせと言う意味と一応その優秀さから、伊達の所属していた捜査一課にとばされた。
定例的に開いていた3人の飲み会も気づけば、松田抜きの3人で行われることが多くなり。今日に至っては、松田の代わりに伊達が参加した始末だ。
『‥‥元気そうなら、良かったじゃん。ほらあんなバカ放っといて、じゃんじゃん飲も！あいつ、捜査一課行った途端鼻高くしちゃって、』
強がりで、無理矢理絞り出した声が、わずかに震えているのが嫌だった。
また吸いたくなる煙草に、これはニコチン切れだ、と女は自分に言い聞かせた。
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作者名：ハル | 作成日時：2021年9月12日 0時
