Another Round

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うだるような体の火照りが、互いに限界を迎えようとしていた瞬間(とき)

「すまない。先に謝っておく」

不意に男が女の頬に優しく触れた。
女は上がる息をおさえ、その意図を知ろうとしたがそれはかなわなかった。

男の武骨な手が、女の細く折れそうなしなやかな腰に回り、すべてを消し去るような腰付きがより一層速まった。
男の熱い吐息が、すべてを包み込む。

快楽に呑み込まれる直前、霞んだ視界に入ってきたのは、男の鉄仮面が外れた余裕の無さげな顔だった。

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男は結局、女の名前を一度も呼ぶことはなかった。

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男がシャワーから上がった音がして、のろりと目を開けると、髪からポタポタと滴を垂らしながらペットボトルの水を流し込む姿が目に入った。

「飲むか？」

『うん、』

男は冷蔵庫から新しい冷えた水を取りだし、キャップを上げて女に差し出した。

『‥‥優しいのね』

ベッドの縁に腰掛けた男にそう呟く。

「母親に教え込まれた」

『意外だわ』

「自分本位のセックスもやめろ、ともな」

『ふふ‥、貴方には到底無理ね』

「改善点でも聞いてフィードバックするべきか？」

『軋まないベッドが高ポイントだったってのはどう？』

熱気の面影が残る部屋で、ふたりの冗談が飛び交う。
上司に対する怒りも、沈む気持ちもすっかりおさまっていた。

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