１３話・忠誠心 ページ14
「一緒にここから逃げるんだ！！！」
その言葉に対してグェイラは何も言わずしばらくの沈黙が流れる。そして、やっと聞こえてきたのは
「……ここから逃げるだって？」
あからさまに威圧的な声色だったが、逃げることで頭がいっぱいであるAは気づかない。
「私は祈手になる為にここに来たわけじゃない！ある奴からボンドルドの暗殺依頼を受けて来たんだ」
「…」
「だが、もうどうでもいい！あんな…ッ…あんな恐ろしいことをする奴の側から一刻も離れたいんだ。グェイラも自らの意志でここにいるわけじゃないんだろ！？なら、一緒に逃げよう！」
全てを話した。それでもグェイラなら裏切らないという根拠のない自信に満ち溢れていたのだ。
しかし、引っ張っていた彼の足が止まった。
「A、駄目だ」
「え？」
「こればかりは見過ごすわけにはいかない」
掴んでいた手を逆に強く掴み返されれば、グイッと引き寄せられ、ガバリと拘束するように抱き締められた。
「あんたはここじゃあ滅多に見ないタイプで話も合って気さくに喋れて一緒に過ごす時間は楽しかった。だから、大事な奴だと思ってたよ。けど、それ以上に俺は旦那のことを慕ってるんだ。旦那を裏切る行為は許すことはできない」
「旦那、Aを捕まえました」と連絡を取るグェイラの様子を見て"裏切られた"という事実に血の気が引いていく。
甘く見過ぎていた。祈手のボンドルドに対する忠誠を。短期間で知り合った私を優先させるわけがないこともよく考えれば分かりきったことだった。
それでも…それでも！グェイラがここで行われている残虐な行為に賛同するのはどうしても理解できなかった。
許せなかった。
「〜ッ離せ！離せよ！！グェイラ！！！」
「A。悪いことは言わない。せっかく旦那に気に入られたんだ。素直に受け入れて祈手になってくれ。それなら、また俺たち仲良くやれる」
グェイラはこちらに顔を覗き込ませる。「大人しく従ってくれ」と再び促してくる彼の声は威圧的ではなく、どこか懇願しているようだった。
だが、Aの心が動かされることはなかった。
「グェイラのこと信じた私が馬鹿だった」
「！」
力強く拘束する腕が緩んだ。その隙を突いて思いっきり肘でみぞうちを殴った。グッとうめき声を上げるグェイラから逃れて駆け出す。
走った先はもうすぐ出口だった。手を伸ばして安堵の笑みが溢れる。
しかし、その角から現れた者の姿に笑みは失われた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヨモギ餅 - メイドインアビスで1番好きなキャラが黎明卿なので楽しく読ませて頂きました！ほんとに面白くて一気に呼んじゃいました!! (9月18日 23時) (
レス) @page25 id: ba2b3def77 (このIDを非表示/違反報告)
P様さん - 最近ボ��を知って夢探して読んだんですがめちゃくちゃ面白かったです!!こんな面白い作品書いてる人は誰だろう……と思って見たらOmiso様~!!!素晴らしい!!これを期にOmiso様の他の夢小説も読んで見る事にします!! (2023年3月30日 22時) (レス) @page25 id: fd9e8b1b91 (このIDを非表示/違反報告)
円陣はずれ - 度し難い、、が、黎明卿の女体化は少し興味あr(( それとグェイラァァァァ‼︎ (2023年1月7日 23時) (レス) @page25 id: dd75b894fb (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 紅葉夜月さん» コメントありがとうございます！ボンドルドのヤバさを全て出し切りました(笑)グェイラとの関係まで褒めて下さってとても嬉しいです！度し難いボンドルドを最後まで堪能して下さりありがとうございました！ (2022年10月17日 21時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉夜月(プロフ) - ボンドルド卿のヤバさも素晴らしさも全て表現されていて最高でした………！！！夢主を手に入れるためなら暴力も厭わないところやグェイラとの関係も最高です！！ (2022年10月17日 20時) (レス) @page25 id: ad75ac515c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Omiso
| 作成日時：2022年7月17日 0時
