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43話 ページ43

五条サイド


「夏油傑は呪詛師だ」


突然告げられたその言葉に信じられなかった。だが学長がいうには多くの非術者並び親までも手にかけた残穢が先程見つかったというのだ。

しかし思い返せば最近の傑の様子は何処かおかしかった。そしてその事実を学長の口から聞くや否や校内にけたたましい警告音が鳴り響いた。

なんだ!? と皆が焦る中、窓の外を見れば呪霊に乗った傑が屋上へ向かって行く姿があった。


「なんで…ッ…」


呪詛師と周知されているのは頭が切れる傑なら理解してるはず。なのに何故わざわざリスクを犯して高専に戻って屋上になんの用が…

ふと頭に浮かんだのはAの姿。そして彼女を愛おしく見つめる親友の光景。

_____あぁ、分かった。傑の狙いはAだと。

その場から駆け出して屋上へと向かう。きっと彼女が屋上にいるという直感が体を突き動かして。

目の前に迫った扉を勢いよく開けて空を見上げる。するとそこにいたんだ。


「Aッ…!!!」


だが、遅かった。扉の向こう側には既に傑に連れ去られるAの姿。

手を伸ばした。届くはずもないのに。すると彼女の口元が動いた。


「もう遅いよ」


聞こえなかったが確かにそう告げられた。そしてあっという間に見えなくなった彼らにその場で崩れ落ちた。

そうだ、遅かったんだ。

何もかも全て遅すぎた。後悔なら山ほどある。その中でも俺はあの日。彼女からの告白に素直になれていたらこんなことにはならなかったんだろうか。


「あ゛ぁぁ…ハハッ…俺は何にも…何にも…!!!」


何も変わらない。拳を振り上げ何度も床を叩いた。滲む血も痛みもどうでもよかった。

親友にも彼女にも俺は置いていかれた。救えなかった。何もしようとしなかった。

彼女にお前がやっぱり好きだって、傑に俺もAが好きだって素直に二人に伝えれば、たとえその時に亀裂が入ろうともこんな最悪な未来にならなかった。

ただこの半年間、傍観者で居続けた結果がこれだ。

後悔したって嘆いたって意味を成さない。自身の気持ち、愚かさ、臆病さに気づくのが遅すぎたのか?いいや、違う…気づいた時にはもう遅かったんだ。

空を仰いで目に映る青が歪んで見えた。きっと今の俺はまた情けなく涙を流しているのか。


「ごめん…ッ…」


何の意味のない謝罪を吐いて一生今日という日を忘れずに過ごしていく。


変えられなかったこの今は分岐点となり、未来の自分をまた苦しめることになるだろう。

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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時

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