気づいた時にはもう遅いから【呪術廻戦】

13話 ページ13

「謝らないで。君は少し誤解をしているようだ」

「誤解？」

「今日の悟はあまり機嫌が良くなくてね。あと体調も優れないらしいんだ」


じゃあ「気分が悪い」といってたのは私の行動に対してではなくただ本当に体調不良だったってこと？

でも、後付けした言い訳にしか聞こえないのは私の気のせい？


「だからね、Aちゃんのさっきの行動に悟は嫌がっていたんじゃない。きっと効果あったよ。見てる私もドキリとしたからね」

「本当にそうですか？」

「あぁ、また放課後までに悟に本当の真意を聞いておくよ。きっと私と同じようにドキリとしたというよ」


と言われても何か納得いかない。あの私を見る目は心底冷たかったと思うし、もうこれ以上何もしない方がいいとさえ思える。

そう考え込み黙り込むと不意に夏油先輩の両手が伸びてきてそっと頬を包まれる。

そのまま上を向かされて真っ直ぐこちらを見つめる三白眼と視線が重なった。


「Aちゃん。しっかり気持ちを保って。君に嘘つくわけないだろ？悟の親友の私がいうんだ。信じて」


ね？と微笑む夏油先輩に自然とコクリと頷いていた。

…そうだ。そもそも夏油先輩が嘘つくはずがないんだ。何を勝手に疑っていたんだろう。とても失礼だ。


「はい夏油先輩！また放課後よろしくお願いします」


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

夏油サイド


私の言葉をまんまと信じて授業へ向かっていった彼女の背中を見送る。完全背中が見えなくなった瞬間その場にしゃがみ込む。


「ブッ…フフッ…アハハ！…あーもう可愛いなぁッ」


腹の底から込み上げる笑いが止まらない。いやぁ、見るに耐えないほどにお馬鹿ちゃんでびっくりしたよ。

恋は盲目とはこのことだね。あの悟の冷たい目と言葉も私の虚言で気のせいだと思い込むところなんて本当に単純。

まぁ、それほど悟が大好きってことなんだろうね。


「んー、でもそれは気に食わないなぁ」


そして、思った以上に悟が拒絶しなかったのも気にかかる。抱きついた瞬間突き放すぐらいすると思ったけど。

まだAちゃんのことがお気に入りなのかな？それとも少しは嬉しかったりして？

そうなれば一番困るのは私だ。そうならないためにもさっさとAちゃんを悟の嫌いな人物像に仕上げないと。


「フフッ、今日の放課後はどんなアドバイスをしてあげようかな」


想いの人から嫌われてる為のアドバイスを。

自分の欲を満たすためのアドバイスを。

恋を実らせない独善的アドバイスを。

14話→←12話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す