39話 ページ39
五条サイド
遅かった。何もかも手遅れだった。
教会であっただろう場所に駆けつけた時にはAは死体となって転がっていて、その事実だけでも絶叫し、泣き叫びたくなるぐらいに気が狂いそうだった。
それでも心を押し殺し、虐殺の元凶を見つける為、死体を抱きかかえて残っていた残穢を追えば、過去に裏切った親友と呪いに成り果てた彼女の姿。
絶叫も泣き叫ぶことすら出来ずただただ愕然とした。
親友が本当にAを殺したということも。そして生前の姿、形をした彼女が呪いとなってそこにいることも。
「なんで…ッ」
見てられずに視線を落とせば、腕の中にある彼女の遺体が目に入る。首には痛々しく絞めつけられた痕。表情は決して幸せそうでもなんでもない。
憎しみを、恨みを、悲しみを宿しきった真っ暗な瞳で何も映さず死んでいる。
____結局、現実から目を背けたって意味はない。
Aが理不尽な死に方をして呪いへと転じてしまったこと。それは…
俺が責任を持ってけじめをつけないといけないだろ。
彼女の瞼をそっと下ろし、これからの戦いに巻き込まれないように端の方の木にもたれさせる。
そして、親友ではなく呪いとなった彼女を見据えた。
「すぐにそいつから解放してやるから。待ってて、A」
「悟。私のことは無視かい?久しぶりの再会だというのに」
「黙れ。お前がそこまでクズとは思っていなかった…ッ…Aを今すぐ返せ!!!」
地面を勢いよく蹴り、傑との距離を詰めて顔面に拳を捻じ込んでやろうと振り上げるが、
「A」
その傑の呼びかけに目の前に彼女が立ちはだり、思わずピタリと拳を止めた。
「安心したよ。呪いにはなりフリ構わない君でもAにはちゃんと情があったんだね」
「〜ッお前、ふざッけんな!!盾にするなんて結局お前にとってAは都合のいい駒なのかよ?!」
そう叫べば、ピシリと額に青筋を立て怒りを露わにし
「は?そんなわけないだろ。勘違いしないで欲しいね。私は彼女の強さを信じたんだよ。悟にも分かるだろ?どれだけ彼女が強力な呪いとなったか」
あぁ、嫌でも分かる。一級…いや下手したら特級レベルに厄介な呪力をもっている。
それほど死ぬ寸前に憎しみを抱き、呪ったのか…ッ…
その場にいられなかったこと、間に合わなかったこと、止められなかったこと全てにおいて後悔ばかりが心を掻き乱し、自身に嫌気がさして吐き気がした。
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Omiso(プロフ) - てんぎつね。さん» コメントありがとうございます。そう言われて実際自分でやってみたんですけど想像以上に痛いですね(笑) (2021年7月28日 23時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
てんぎつね。 - いや親指は反り返したら痛い (2021年7月28日 23時) (レス) id: 04fcd4138c (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - るりさん» るり様、コメントありがとうございます!貴方様のお言葉に嬉しさで胸がいっぱいです!そして、貴方様の作品を読ませて頂いております。今後の更新楽しみにしています!応援ありがとうございます!貴方様にも私からのエールを。 (2021年6月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 最高な作品をありがとうございます。ほんとにその場にいるような臨場感や、細かく描かれる表現方法であっというまに読んでしまいました。これからも作品楽しみにしています! (2021年6月5日 11時) (レス) id: 82fe86bccf (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» コメントありがとうございます!読者様がゾクゾクするようなホラー×ヤンデレを感じて頂けていたらと思います!夏油の術式を上手く活かせることを目的にしていたので貴方様の褒め言葉本当に嬉しく思います!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2020年12月17日 19時